泥酔学生下車し凍死、タクシーに賠償命令 松山地裁

http://www.asahi.com/national/update/0325/OSK200903250117.html

判決などによると、学生は07年12月21日夜、松山市内で友人らと酒を飲み、翌22日未明、帰宅するため1人でタクシーに乗った。運転手は松山市玉谷町の国道で降車させ、学生は約200メートル歩いたところで石手川の河原に転落して凍死した。降車したのは自宅から約4キロ北東の山中だった。
運転手は学生の指示で現地に下ろしたと主張したが、武田裁判官は「学生が友人に抱えられ泥酔状態でタクシーに乗車してから降車まで20分しかたっておらず、降車時は酔っていると感じなかったとする運転手の供述は信用できない」とした。その上で、「運転手は現場付近の地理に詳しく、泥酔した学生を降車させれば、転落や凍死の危険性があることは明らかだった」と結論づけた。

具体的な証拠関係がよくわかりませんが、泥酔状態にある乗客を、12月の夜間に山中で降ろしてしまう、という非常識さが厳しく問われた、ということでしょうか。安全配慮義務ということを考える上で、特異なケースとはいえ考えさせられるものがあるという印象を受けました。
お酒の飲み方が良くなかったとはいえ、もっと親切で配慮できるタクシー運転手にあたっていれば、死ぬまでのことはなかったと思われ、若くして亡くなった学生さんが気の毒ですね。

追記:

この件については、その後、東京新聞から取材を受け、本年4月3日の東京新聞朝刊24面(11版)の「こちら特報部」で、「乗客降車後に凍死、賠償命令 タクシー責任どこまで」という記事の中で、私の、

四国勤務経験がある元東京地検検事の落合洋司弁護士は「東京の夜に慣れた人には想像できないかもしれないが」と前置きし、「『降ろしてくれ』と言われたからといって、寒い時期に山中で降ろすのはいかがなものか、との判断だろう。客を荷物みたいに運ぶだけでいいのか、という考え方はうなずける」と話す。「運転手の安全配慮義務には、人里や警察署、交番まで連れて行ったり、客の家族に引き取りに来てもらうという配慮まで含まれるという認識を持った方がよさそうだ」

というコメントが掲載されていました。
コメントとしてはその通りなのですが、本件の特殊事情(上記のエントリーで触れたような)がかなり判決には影響しているように思われ、タクシー運転手に過重な義務を負わせる方向に物事が進むのもどうかど思いますが、ケースバイケースの中での適切な判断というものが求められている、ということは言えるように思います。