審理「スピードより充実」…裁判員制度で最高裁が報告書

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090116-00000062-yom-soci

報告書は、裁判員裁判の基本原則として、〈1〉裁判員が審理を理解できる〈2〉合理的な期間で審理を終え、裁判員の負担をできるだけ軽くする〈3〉真相解明と被告の権利保護−−を挙げた。
その上で、「裁判員裁判でも真相の解明は審理期間の短縮以上に重要だ」と指摘。公判前整理手続きでは、「証拠の点数を減らすことのみに力を注ぐのではなく、真相解明に必要不可欠な証拠は何かという観点が重要だ」と述べ、「証拠の絞りすぎ」と言われる傾向にクギを刺した。

被告人の権利保護だけでなく、被害者やその関係者、遺族の権利保護ということも考慮すべきでしょう。
現在、東京地裁で審理中の、江東区におけるバラバラ殺人事件(バラバラ、と言うより、粉々、と言うべきかもしれませんが)で、検察官が、発見された被害者の骨片などを事細かに、これでもか、これでもかと法廷でモニターに映写するなどしたことが話題になっていますが、真相解明や真相を裁判官、裁判員に知ってもらうことは重要であっても、その一方で、被害者の尊厳を守り被害者の関係者や遺族の感情にも十分配慮する、という要請を忘れるべきではないでしょう。例えば、骨片を何百点も示すのではなくそのうちの何点かを簡潔に示し、同様の証拠物が多数発見されていることを口頭で告げ写真を簡潔に示して済ませるとか、真相解明を阻害しない範囲内で、よりマイルドな方法はあったはずです。こういった問題は、今後、裁判員が実際に関与する公判が開始されれば、全国各地で顕在化するでしょう。
最高裁が報告書で指摘していることは、当たり前のことで新味はありませんが、逆にいえば、そういった要請に応えられない、応えられる見込みが低い裁判員制度というものに対し、大きな疑問を裏から投げかけているという読み方もできないわけではなく、裁判員制度推進一辺倒で来た最高裁が、頓挫した「その時」に備え、逃げ場を確保しつつあるということなのかもしれません。