<公取委人事>政府、野党指摘で撤回…無資格で弁護士名乗り

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081121-00000147-mai-pol

公取委人事課によると、上杉氏の肩書が「弁護士」と書かれていたのは、法律解説書「実務解説 独占禁止法」のチラシ。上杉氏は一橋大大学院教授と法律事務所シニアコンサルタントを務めているが、「一橋大学大学院教授・弁護士」と書かれていた。本の中の著者紹介欄には「弁護士」の記載はなかった。
公取委が出版社の第一法規に確認したところ、同社担当者のミスだった。チラシは同社が上杉氏の確認を取らずに作成したものだった。
また、上杉氏は94〜95年、月刊誌にペンネームで独占禁止法関連の原稿を書いた際、肩書が弁護士になっていた。複数の執筆者に同じ「大野金一郎」というペンネームがつけられており、肩書も含めて出版社が考えたものだったという。

弁護士でもないのに、法律事務所のシニアコンサルタントなどという、訳のわからない仕事をしているから、こういったもみっともないことが起きるのでは、という印象を受けますね。非弁活動の隠れ蓑としてそういった肩書を使っていたわけではない、と信じたいところですが、上記のような醜態を見ていると、果たして実態やいかに、という疑念は生じます。
例えば、

http://martindale.jp/lawyers/Uesugi_Akinori.html

を見ると、

ホーム > 弁護士・法律事務所検索 > 検索結果 > 弁護士プロファイル

というところに、この人のプロフィールが紹介されていて、これを見れば、かなりの人が、この人は弁護士だと誤解すると思います。これも、おそらく、自分が知らないところで担当者が勝手にサイトに出した、という話になると思われますが。
いずれにしても、自分の書いた本のチラシや原稿に記載された肩書の管理すらまともにできない人間に、公取の委員が務まるとは思えず、撤回の措置は妥当でしょう。
なお、弁護士法では、74条1項で、

弁護士又は弁護士法人でない者は、弁護士又は法律事務所の標示又は記載をしてはならない。

とされ、違反すると100万円の以下の罰金に処すると定められています(第77条の2)。

追記:

11月22日の朝日新聞朝刊政治面の記事では、大野金一郎なる架空の弁護士名での論文について、問題の元公取事務総長氏は、「実在する弁護士のゴーストライターとして書いたつもりだったが、その弁護士は実在しなかった」と弁解しているということですが、その弁解を前提としても(かなり怪しい弁解ですが)、
1 実在する弁護士のゴーストライターとして執筆を行い、読者が、実在する弁護士によるものと誤認することを許容していた
2 「実在」する弁護士が誰か、ということも、終始、確認していなかった
3 自分の意図したところ(上記の弁解)に反する、社会的にも法律的にも(上記の弁護士法違反の問題も生じる)問題が生じているのに、何らの措置を講じた形跡がない
ということが、問題として指摘できるでしょう。
通常、こういった論文作成の過程で、ゲラのチェックくらいはするし、出版された雑誌は出版社から送ってくるのが普通で、「よく見ていなかった」と言われればそれまでですが、それで通るのか、と言えば、かなり通りにくいと思いますね。国会での同意人事が取り下げられていることも、単に政争の犠牲になってかわいそう、では済まないと思います。
本当に弁護士に「間違われた」だけの、気の毒なかわいそうな人なのか、ということになると、そうは思いにくいですね。