気骨の判決―東條英機と闘った裁判官

気骨の判決―東條英機と闘った裁判官 (新潮新書)

気骨の判決―東條英機と闘った裁判官 (新潮新書)

昨日、体調も良くなり書店に立ち寄ってぶらぶらしていたところ、見かけて買い、一気に読みました。戦時中の翼賛選挙について、鹿児島の選挙区から立候補し落選した非推薦候補者から出た選挙無効の訴えに対し選挙無効の判決を出した大審院判事、特に部長であった吉田久について取り上げたもので、以前、報道でそういう事件があったことは知っていたものの、こうしてまとまった形で読むのは初めてで、興味を感じました(それで一気に読んでしまったわけですが)。
いろいろと感じるところはありましたが、吉田氏が、苦学して司法官の地位を得て、その後も非常に努力を重ねて大審院部長にまで昇進した、その歩みには強い印象を受けるとともに、そういった中で培われた物の見方、リーガルマインドといったことが、「東條幕府」まで言われたような当時のファッショの風潮に抗して上記のような判決を出すにまで至らせたのではないか、と感じました。
今後、法科大学院に進学しないと法律家になることが非常に難しい、という状況が定着すれば、吉田氏のような苦学型の法律家はなかなか出にくく、それが、法曹界や日本国全体にとって、はたして良いことなのかどうか、ということも考えさせられる面がありました。