引越作業中に出てきたもの

書斎兼物置の引越のため、昨日も必死に片付け作業を行っていましたが、その過程で、いろいろなものが出てきました。どこかに行ってしまっていた司法試験の合格証書も出てきて、ほっとしましたが、平成5年に早世した坪内利彦氏の追悼文集を久しぶりに目にしました。
坪内氏は、元検事で、ロッキード事件の捜査で、田中元首相の運転手を取り調べたことで有名ですが、優秀さから将来を嘱望されながら、東京地検交通部長在職中に病に倒れ、平成5年に亡くなりました。追悼文集によると、享年50歳とのことで、あまりにも若すぎる死であったと思います。文集中の写真に、先日、亡くなった北島元検事総長と一緒に坪内氏が写っているものもあって、寂しさを禁じ得ませんでした。
私自身は、坪内氏との接点はほとんどありませんでしたが、新任検事当時、当時まだあった東京地検の第2庁舎で仕事をしていた時期があり、そこに坪内氏が刑事部副部長としておられて、直接の上司ではありませんでしたが、勾留請求の決裁を受けたりしたことが何度かありました。思い出されるのは、勾留請求の決裁に行った際、何か鋭い質問を受け、返答できずに絶句していると、再度検討し直してくるよう言われた場面で、自分の至らなさを強く感じたせいか、その場面の坪内氏の表情が、なぜか今でも思い出されます。
存命であれば検察庁で栄進し、司法改革の大きな動きの中でかなり活躍されたのではないか、などと、文集を見ながら思い、今となっては坪内氏のことを話題にする人もいなくなって、人の命のはかなさ、といったことを感じました。
文集中には、ご家族によるものもあって、改めて読むと、胸が痛むのを感じました。坪内氏死去当時、2人のお子さんは中学生から高校生であったようですが、今では立派な社会人になられていることだろう、などと思いながら文集を閉じ引越作業に戻りました。