正当防衛:「先に手を出し反撃され攻撃」は認めず 最高裁

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080522k0000e040064000c.html

2審・東京高裁判決によると、被告は05年11月、東京都府中市の路上で50代男性と口論になり拳で顔を殴った。自転車で追いかけて来た男性に後ろから首周辺を腕で強くぶたれたため、特殊警棒で男性の顔などを殴り3週間のけがを負わせた。
正当防衛が成立するには危険が差し迫っていること(急迫性)が必要。最近の裁判例はこうしたケースでは、相手の攻撃を予期できたかどうかで判断しており、2審は「被告は相手の報復攻撃を十分予期しており、急迫性はない」と正当防衛を否定した。
これに対し小法廷は「相手の攻撃は被告の暴行に触発された一連の事態であり、被告は自らの不正行為により侵害を招いた」と指摘し、報復攻撃を予期していたかどうかにかかわらず、原則として正当防衛は成立しないと判断した。

従来、「喧嘩と正当防衛」という形で取り上げられてきた問題ですが、喧嘩というのは、互いにやったりやられたりという連続するやりとりであり、基本的には正当防衛という観念を入れる余地はないものの、途中で、一方の攻撃が質的、量的に変化し、それに対して防衛の必要性があるような事態が生じれば、正当防衛ということを考える余地もある、というのが通説的な見解であったように思います。
従来の判例では、侵害を予期しているような場合は侵害の「急迫性」が失われるとされてきていますが、予期まで至らないまでも、正当防衛という、不正に対する正の闘いを正当化する、という制度の趣旨に合わないような場合に成立を排除すべきケースがあり、本件のような場合は排除すべきであって、その理由付けとして、上記のように言ったものでしょう。「原因において違法な行為」という考え方がありますが、その考え方を取り入れているという印象を受けます。