「検察に迎合」元弁護人を懲戒審査 神戸市議汚職事件

http://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/0001034073.shtml

議決書によると、弁護士の一人は、神戸地検の検事から「上申書を出さなければ弁護人を取り調べる」との連絡を受け、弁護士費用を受け取った経緯や、村岡被告がわいろ性を認識していたことを示す内容を記した上申書を提出した。
弁護士は被告の了解を得ていたと主張したが、議決は「信じ難い」とした上で「軽率で違法性が強い。検察の圧力に迎合するなど、弁護人の資格すらない恥ずべきものだ」と指摘。もう一人も「非行に加担した非難は免れがたい」とした。

今ひとつ事実関係が見えない、という印象を受けますが、弁護人が、「被告がわいろ性を認識していたことを示す内容を記した上申書を提出した。」というあたりは、なぜそのようなことをしてしまったのか、かなり理解困難ですね。
弁護人を取り調べたい、と検事が言ったからといって、まず、応じる、応じない、ということを考えるべきであり、また、取調べを受けた場合でも、守秘義務等の制約があるのは当然のことですから、聞かれたことを聞かれるままにしゃべる、という選択肢以外にもいろいろあるはずです。そもそも、取調べを受ける、という連絡を受けた程度で(と言えるかどうかも正確にはよくわからないのですが)、びびってしまう、というのが情けない話です。
刑事事件というもの、そのものに慣れていない弁護士であったのかもしれませんが、もし、そうであれば、贈収賄事件のような難易度の高い事件を受任するべきではなく、私は不慣れなのでできません、と言って断るべきだったのではないか、とも思います。
最終的にどういった懲戒になるかはわかりませんが、一種の弁護過誤の事案、ということは言えそうです。

追記:

コメント欄で紹介していただきました。ありがとうございます。こちらの記事のほうが詳しいですね。

弁護人の「懲戒相当」議決…被告に不利な上申書提出
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20080512p202.htm

議決書によると、59歳の弁護士は、村岡被告逮捕後の06年6月20日ごろ、神戸地検の担当検事から、2000万円を受け取った経緯について上申書を出さなければ取り調べるとの連絡を受け、上申書を提出。51歳の弁護士は上申書の作成・提出を知りながら、反対していなかった。

51歳の弁護士についても綱紀委は「59歳の弁護士に比べて非行は軽いが、非難は免れ難い」とした。また、この弁護士は捜査を担当した神戸地検幹部と懇意で、「(59歳の弁護士の)免責と引き換えに、依頼者の有罪の証拠を検察に提出する一種の取引を行った疑問をぬぐえない」とまで言及した。

「51歳」のほうがヤメ検であったということですが、実際に、そういった「取引」があったかどうかはよくわからないものの、刑事事件に慣れすぎている者が陥りがちな、一種の陥穽に落ち込む、という危険もあるものです。
弁護人として、自分が守るべきものは何か、弁護人としていかに身を処すべきか、ということは、特に難しい局面ではよく考えて判断する必要があり、「59歳」と「51歳」が有していた知識、経験はともかく、そういった判断に失敗した事例、ということは言えそうです。