「心神喪失」で有罪はダメ…「鑑定尊重を」最高裁初判断

http://www.asahi.com/national/update/0425/TKY200804250324.html

第二小法廷は判決の中で「専門家である精神科医の意見は、公正さや能力に疑いがあったり、鑑定の前提条件に問題があったりするなどの採用できない事情がない限り、十分に尊重するべきだ」とする初めての判断を示した。

この日の判決で第二小法廷は、被告の責任能力の有無を判断するのは、あくまでも裁判所だとする従来の判例を踏襲した上で、一審と二審で実施された精神鑑定の中身を検討。「鑑定人としての資質を十分備えており、結論を導く過程にも誤りはない。いずれも基本的に信用できる」と結論づけた。

上記の記事中にある「責任能力の有無を判断するのは、あくまでも裁判所だとする従来の判例」の存在はよく知られていますが、だからと言って裁判所が勝手な判断をしてよい、とは実務上も考えられておらず、鑑定の結果は尊重し、疑問があれば再鑑定を行ったりして、鑑定結果に真っ向から反する判決というものは、通常は出さないし、出せないものです。
そういった、刑事実務の健全な傾向、取り扱いを確認したという意味で、この判例の意義は小さくないでしょう。

追記:

上記判例最判平成20年4月25)は、判例時報2013号156頁以下に掲載。
その後の差戻審判決(東京高判平成21年5月25日)は、更に医師作成の意見書を取り調べるなどした上、上告審判決が指摘した検討事項を検討し、両鑑定意見はその信用性に問題があるなどとして、心神耗弱と判断(判例時報2049号150頁以下)。