無銭宿泊に「無罪」地裁 「故意と認めず」

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/ishikawa/news/20080412-OYT8T00118.htm

判決によると、男は昨年10月18日、金沢市内のホテルで宿泊したが、所持金は60円しかなく、詐欺容疑で現行犯逮捕された。
しかし、男は「ホテルで女性と待ち合わせをしていた。利用代金は女性に払ってもらうつもりだった」として公判で無罪を主張。検察側は「女性との約束はなく、男の供述は信用できない」として、懲役2年を求刑した。
同地裁の竹内大明裁判官は3月28日の判決で、男がホテルの宿泊中に、利用代金の支払いのために金を借りる電話を知人にかけていたとして、「当初から無銭宿泊をするつもりでホテルを利用したとすれば行動が矛盾する。男の説明は合理的で自然」として検察側の主張を退け、無罪を言い渡した。

無罪判決後に、また無銭宿泊で逮捕された、ということで、無罪判決に対しても検事控訴があったようですが、この種の「ツケがきくと思っていた」「知人、友人が支払ってくれはずだった」といった弁解は、無銭飲食、無銭宿泊といった事案では、時々出ることがあります。
そういう弁解が出たから、即、犯意がない、ということにはならず、この種の詐欺事件で問題になる「支払意思・能力」の、特に支払能力の点をより深く掘り下げて考えて、利用者の立場(サービス提供者と顔見知りかどうかなど)、そもそもツケがきくような店かどうか、知人、友人が支払ってくれることの可能性、確実性やそのことを正直に話した場合にサービス提供が受けられる状態であったかどうか、等々を丁寧に調べて、被疑者からも騙された側からも調書化しておく必要があります。上記の無罪判決の理由をきちんと見ないと正確な評価は困難ですが、宿泊中に「金を借りる電話を知人にかけていた」ということは、そういう事実があったとしても、それだけ支払の可能性、確実性が低かったことの現われと言えるように思われ、犯意の捉え方がやや安易なのではないか、という印象は受けます。
詐欺事件というものは、なかなか難しいもので、詐欺の捜査、事件処理ができるようになれば検事としても一人前、と言われますが、一見、簡単に見える無銭飲食、無銭宿泊のような事案であっても、なかなかの難易度ということを、上記の事件は示しているように思います。