刑法105条の2にいう「威迫」の方法(最高裁第三小法廷平成19年11月13日決定・判例時報1993号160頁)

暴行罪で起訴された被告人が、1審公判で証言した証人に対し、公判係属中、不安、困惑の念を生じさせる文言を記載した文書を郵送して閲読させたという行為につき、証人威迫罪が問題となった事案について、

刑法105条の2にいう「威迫」には、不安、困惑の念を生じさせる文言を記載した文書を送付して相手にその内容を了知させる方法による場合が含まれ、直接相手と相対する場合に限られるものではない

との判断が示されています。
判例時報のコメントで指摘されているように、暴力行為等処罰に関する法律の中にある「面会強請」「強談威迫」が、直接相手方に対して行われる必要があると解されていることとの関係で、同じ文言が使用されている証人威迫罪においてはどうか、ということが問題になります。
最高裁は、上記のような判断を示したわけですが、証人威迫罪の保護法益を考えると、直接相手と相対する方法以外の方法により威迫する、ということによっても法益は同様に侵害されますから、この判断は妥当でしょう。
同罪の「面会強請」について、直接相対する方法以外は含まないとした高裁判例があることが、判例時報のコメント欄で紹介されていますが、上記の決定はそこまでは判断していないものの、直接相対する方法以外の「面会強請」も含む、と、今後、最高裁によって判断されることになる可能性はありそうです。