航海長聴取は問題なのか イージス艦事故

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080227-00000971-san-pol

航海長への聴取が問題となることは、日本が「普通の国」でないことに起因する。実はこちらの方が格段に深刻だ。海上事故に関して、自衛隊には裁判権が与えられておらず、とりわけ民間との事故では事実上、海保に捜査権を委ねることが慣例化しているからだ。
だが、軍事法廷を廃止したベルギー軍や、制度は法律上で担保されているものの、現実には軍事法廷が設置されていないドイツ軍など一部の国軍を除き、軍隊における捜査・裁判権の独立は国際的な常識だ。

司法警察が事実上の国軍を取り調べる、国際的にはほぼ考えられない構図を、国民も政治家も奇異に思っていない証左である。

自衛隊が「事実上の国軍」かどうかはともかく、小さな漁船との衝突も避けられず、国民の生命、身体を害するような間抜けな「国軍」が、司法警察の捜査の対象になることを、私は奇異には思いませんし、それが奇異に思われない、ということを、さも、おかしなことのように論じること自体が「奇異」だと思いますけどね。
この感覚では、沖縄で米軍将兵沖縄県民に対して犯罪行為に及んでも、米軍独自の捜査、裁判を行うのが筋だ、などという話になってしまうでしょう。
犯罪の嫌疑がある以上、自衛隊であっても司法警察の捜査の対象になる、という制度が「普通ではない」と言うのであれば、普通ではなくて結構、むしろ、そのほうが健全、という気がします。
航海長に対する事情聴取を行うとしても、海上保安庁の捜査担当者と共同で行い、あらぬ疑いを避けるなど、より適切な方法があったはずで、「司法警察が事実上の国軍を取り調べる、国際的にはほぼ考えられない構図」などという見当違いな批判を加えているところが、いかにも産経新聞らしい、という気がします。戦後の日本がどのような状態から出発したか、なぜそのような状態になってしまったか、ということを、事実上の国軍がどうこうなどと言う前に、少しは考えてみるべきでしょう。