『共謀』捜査進展カギ 逮捕の妥当性、識者二分

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008022590070819.html

九八年の東京高裁判決は一転、三浦容疑者に逆転無罪を言い渡した。殴打事件や状況証拠から、検察側が三浦容疑者を疑うことに一定の理解を示しつつ、「仮に氏名不詳者と共謀したとしても、共謀が成立していた事実や氏名不詳者に銃撃させたと推断するだけの証拠はない」と断じた。
「重要な点は未解明の部分が多く、質の高い状況証拠が不可欠」と指摘。安易な立証は解釈や推論の余地を与え、冤罪(えんざい)を生む危険性を示唆し「疑わしきは被告の利益に」の原則に沿った判決となった。
最高裁は二〇〇三年、「氏名不詳の者との共謀を認めるには合理的な疑いが残る」として、三浦容疑者を無罪とした高裁判決を支持、上告を棄却している。

この事件の証拠構造は、先行する一美さん殴打事件が存在したことを重視し、三浦元被告人に犯行に及ぶ強い動機が存在したことを中心に据え、様々な状況証拠から、共犯者も含め完全な否認事件であったにもかかわらず立証を試みたものであった、と言えると思います。日本の裁判所は、「精密司法」とも言われる精緻な審理を行い、被告人や弁護人が指摘した様々な問題点、疑問点を細かく検討して、上記のような結論に至りましたが、そもそも、こういった証拠構造にある事件は、細部のほころび、矛盾にあまりこだわらず、大きな状況証拠に着目し、「ざっくりと」判断する傾向がある陪審裁判のほうが、有罪判決が獲得しやすい、という傾向があるのではないか、と思います。
また、犯行態様が、保険金目的で、しかも、本国外で妻を殺害し悲劇の犠牲者を装う(実際に犯行に及んでいれば、という場合ですが)ものであり、かなり悪質なもので、陪審員の心証に、有罪方向で与える影響にも大きなものがあるように思います。
この期に及んで、今更、共謀罪程度で起訴するためにわざわざ身柄までとったとは考えにくく、また、新証拠があるかどうかもよくわかりませんが、おそらく、既存の証拠を検討し、アメリカの陪審裁判であれば第一級殺人罪で有罪を獲得できる、という強い自信の下で、アメリカの捜査当局がこのような措置に踏み切った、と見るのが自然かつ合理的ではないか、と私は思います。

米ドラマ:ロス事件で注目「コールドケース
http://mainichi.jp/enta/geinou/news/20080225spn00m200008000c.html?inb=yt

このドラマを地でいくような展開をたどっているのが、事件から27年を経て三浦容疑者の逮捕に至った“ロス疑惑”。現地紙などは科学捜査による新たな証拠などが見つかったことから、ロサンゼルス市警が逮捕に踏み切った可能性を指摘。さらに、三浦容疑者逮捕の第一報を伝えた「ロサンゼルス・タイムス」の電子版では「コールドケース・ディテクティブ(迷宮入り事件捜査官)が尽力した」などの表記もある。
ドラマは、日本ではWOWOWが夏からシーズン4を放送する予定。

先日も触れましたが、

http://www.wowow.co.jp/drama/cold/

ですね。
「新証拠」があるなら、是非、見てみたいという気がします。そもそも、現地の捜査当局のほうが、日本のそれよりも「現場」には近く、証拠にはアクセスしやすい立場にあって、何らかの新証拠を入手している可能性はあるでしょう。日本の無罪判決で厳しく指摘された、未解明の「実行犯」に関するものであれば、かなり注目されると思います。