刑事事実認定の基本問題

刑事事実認定の基本問題

刑事事実認定の基本問題

木谷明教授古希記念、ということですが、よくあるこの種の論文集とはやや異なり、実務家(現職、元職の裁判官)執筆による、刑事事実認定に関する実務的な論文集になっています。
少し読んでみましたが、健全な実務感覚が感じられ、この分野では参考になる1冊と言えそうです。ただ、やや気になったのは、本の帯に「LS学生必読!」とありますが、ロースクールの学生が、このようなレベルまで丹念にやっていては、とても身が持たないのではないか、ということでした。
事実認定の問題は,確かに重要で、また、やればやるほどおもしろく、やりがいもあるものですが、生の事件、記録に接する機会が乏しいロースクール段階では、勉強にも限界があり、限界があるだけでなく、生の事件、記録に接しないまま、この種の事実認定の教科書にしがみついての勉強が行き過ぎると、一種の偏った「刷り込み」のようなものも生じかねず、そういった意味でも、ほどほどにしておいて、本格的な勉強は司法修習以降、というのも一つの考え方ではないか、という気がします。
ロースクール段階で、あれもこれもとあまりにも過大な負担がかかり、また、先取りしすぎたことをやるのもどうか、という問題があって、その辺はなかなか難しいものがあるように思います。