無期3人、死刑2人 2人射殺事件で最高裁判事割れる

http://www.asahi.com/national/update/0222/TKY200802220316.html

福島県いわき市で03年、同じ暴力団の関係者2人を射殺して約30万円を奪ったなどとして一審、二審とも無期懲役とした。
検察側の上告に対し、涌井、泉徳治、横尾和子の3裁判官の多数意見は「一般市民を巻き込んでいない。自ら警察に出頭して大筋で認めている」など有利な事情を列挙、無期懲役を支持した。
甲斐中辰夫、才口の両裁判官は「暴力団関係者同士の事件」という理由で有利に酌量される実情に疑問を投げかけた。過去の判断基準と判例に照らすと死刑が相当だとする一方、死刑を回避する特別な事情があるか審理を尽くすため、高裁に差し戻すべきだとした。

被害者2名の強盗殺人事件ですから、死刑適用があり得ることは間違いなく、有利な事情、不利な事情をどのように評価するかによって結論が分かれてくる、死刑と無期の分水嶺とも言えるような事件であった、ということなのでしょう。
従来、確かに、暴力団内部で発生した事件では、そうではない事件に比べて、やや刑が軽くなる傾向がありました。そういった社会に敢えて身を投じている被害者側の落ち度、といったことが考慮されていたとも言えるかもしれません。しかし、光市母子殺人事件等で最高裁が示した基準に照らすと、結果の重大性こそを重視すべきである、という考え方は、当然、出てきて不思議ではなく、上記のような2裁判官の少数意見は、そのような考え方から出てきているものと思われます。
今後も、死刑か無期か、分水嶺に位置する事件は、死刑制度が存続する限り、必ず生じるものであり、そのような事件の参考になる事件、と言えると思います。

追記(平成21年8月20日):

判例評論606号29頁(判例時報2042号175頁) 本庄武(一橋大学准教授)