<脅迫事件>「被害者調書ずさん」地裁川崎支部が無罪判決

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080126-00000017-mai-soci

ボツネタ経由。

起訴状によると男性は06年11月3日未明、中原区の居酒屋で、入店を断られた腹いせに火のついた段ボールをシャッター前に置き、女性店主に危害を加えようとしたとされた。
男性は通行人の通報で駆けつけた警察官に、現住建造物等放火未遂容疑で現行犯逮捕された。男性の弁護士によると、かなり酒に酔って常連の店に行っており、段ボールに火は付けたがすぐに消え、脅迫の意図はなかったと主張していた。公判での証言で、女性店主は脅迫されたと思わず「早く釈放してほしい」と話したという。
判決で加登屋裁判長は、脅迫罪を認定できる証拠はないと指摘。判決後の「苦言」として「検察官は明確な被害者調書を作成せず、公判で被害者を尋問することで立証できると考えたようだが、そんな証拠構造で男性を起訴し、公判維持をしたこと自体問題があったと言わざるを得ない」と指摘した。

上記の経緯を見る限り、現住建造物等放火未遂容疑で現行犯逮捕後、捜査の中で、女性店主側から脅迫被害にあったとう供述、調書が得られず、そのような状態のまま、放火未遂では起訴せず(おそらく起訴できず)、脅迫罪で起訴に至ったようです。
裁判長が指摘するように、証拠収集の在り方にかなり問題があり、そもそも、上記のような犯行態様で、被害感情が皆無であるにもかかわらず「脅迫」を認定しまうというセンスのなさ、も相当問題でしょう。
主任検察官だけでなく、組織内の決裁の在り方にも、深刻な問題がありそうで、こういう起訴、無罪例が出てくるということは、検察庁の力も相当落ちてきているな、と思わざるを得ません。
弁護士になった立場としては、勝手に力が落ちてくれるのはありがたいものの、かつて籍を置いていたものとして、また、一国民としては、困ったものだという気持ちもあって、なかなか複雑な思いがあります。
以前から本ブログでも繰り返し指摘していますが、こういった無罪事件については、捜査機関内で徹底した検証を行い、失敗を繰り返さないという方向へ生かす努力が必要であると思います。