「バブル」

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最近、一躍、時代の寵児化している田中森一氏ですが、おもしろそうだな、と思い、購入して読み始めたところ、やはりおもしろくて、一気に読んでしまいました。
ベストセラーになっている

反転―闇社会の守護神と呼ばれて

反転―闇社会の守護神と呼ばれて

については、以前、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070702#1183309010

でちょっとした感想を述べたことがありますが、「反転」を先に読んだ上で、「バブル」を読んだほうがわかりやすいでしょう。
「バブル」を読んでいて感じたのは、田中氏の優れた能力、人間的な面も含めた幅広さ、奥深さや、このような優秀な人物が、汚辱にまみれたまま塀の内側に落ちて行き、このまま消えてしまいかねないのは惜しい、ということと、そのような優秀な人物が、なぜ、つまずき、陥穽に落ちてしまったかがよくわかるな、ということでした。
杓子定規な言い方にはなってしまいますが、弁護士等の法律家と、そうではない、いわゆる事件屋等の、本質的な違いは、前者が、法律や法律に基づく諸制度の枠内で紛争を解決すべき立場にあるのに対し、後者には、そういった枠組み、制約は無関係である、ということでしょう。前者による紛争解決には、その意味で限界もあり、まどろっこしくもあるのに対し、後者のほうが、場合によっては目覚しい成果が達成できる場合もあるでしょう。しかし、弁護士等の法律家が、上記のような枠組み、制約を踏み越えてしまえば、やはり、立場をわきまえていない、ということになり、様々な落とし穴の中に自ら落ち込んで行く、ということになってしまうと思います。田中氏の場合、そのような一線を踏み越え、非常にユニークな(良くも悪くも)存在となることで、一世を風靡し経済的にも大きな成功を収めましたが、同時に、無数のリスクに取り囲まれた状況に自らを置いたことにもなり、そのような状況の中で、司直の手に落ち実刑判決の確定、収監を待つしかない立場に追い込まれてしまった、と言えるように思います。
「バブル」における田中氏の発言も、多少、誇張等も見受けられなくはない面があり、全面的には真に受けられませんが、かなり真実、核心を突いた点も随所に見られて、こういったブラックな、あるいはグレーな世界を垣間見てみたい、興味がある、といった人には参考になる1冊、という印象を受けました。