「日本のいちばん長い夏」

日本のいちばん長い夏 (文春新書)

日本のいちばん長い夏 (文春新書)

昭和38年に、半藤一利氏が司会を務め、行われた座談会が再録されていますが、既に物故し、今では歴史書の中でしか登場しない人々が出席して、貴重な体験談を披露しており、興味深いものがありました。
荒尾・陸軍省軍事課長(当時)らが、阿南陸相に迫った際の様子について、荒尾氏が、

大臣はいいました。一歩進まれまして、
「不服なものはまず阿南を斬れ」
鞭をぴっと振って、それは強い強い態度でしたね。
(65ページ)

と当時を振り返っているところが非常にリアルで(「鞭をぴっと振って」というところも)、やはり、半藤氏が指摘するように、阿南陸相がいたからこそ、徹底抗戦を叫ぶ陸軍を抑え終戦へと持ち込むことができた、という感を深くしました。

追記:

上記の「鞭」を、なぜ阿南陸相が持っていたのか、何の鞭なのか、調べてもわからず、旧陸軍に在籍経験がある方に聞いてみたところ、乗馬用の鞭だろう、とのことでした。旧陸軍将校は、騎兵科出身でなくても、士官学校在学時から乗馬の訓練を受けていて、移動の際に馬を利用することは日常よくあることであり、特に、昭和20年当時は、ガソリン不足で、陸相であっても、車より馬のほうが利用しやすかったのではないか、とのことで、やっと、なるほどと納得できました。
荒尾・元軍事課長にとっては、阿南陸相が鞭を持っていることも日常風景だったのかもしれませんが、私にとっては、「なぜ?」ということになってしまい、この辺も、歴史の難しさ、と言えるかもしれません。