歴史を感じさせる児童福祉法

下記のエントリにある児童福祉法ですが、法文を見ていると、日本における児童保護の歴史を感じさせる部分があります。
34条1項では、禁止される行為として、

1.身体に障害又は形態上の異常がある児童を公衆の観覧に供する行為
2.児童にこじきをさせ、又は児童を利用してこじきをする行為
3.公衆の娯楽を目的として、満15歳に満たない児童にかるわざ又は曲馬をさせる行為
4.満15歳に満たない児童に戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で歌謡、遊芸その他の演技を業務としてさせる行為
4の2.児童に午後10時から午前3時までの間、戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務としてさせる行為
4の3.戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務として行う満15歳に満たない児童を、当該業務を行うために、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条第4項の接待飲食等営業、同条第6項の店舗型性風俗特殊営業及び同条第9項の店舗型電話異性紹介営業に該当する営業を営む場所に立ち入らせる行為
5.満15歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為
6.児童に淫行をさせる行為
7.前各号に掲げる行為をするおそれのある者その他児童に対し、刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある者に、情を知つて、児童を引き渡す行為及び当該引渡し行為のなされるおそれがあるの情を知つて、他人に児童を引き渡す行為
8.成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が、営利を目的として、児童の養育をあつせんする行為
9.児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて、これを自己の支配下に置く行為

とされていて、1号、2号は、現在も諸外国によっては日常的に見られるようですが日本では皆無であり、3号、4号も、普通は見受けられないでしょう。かつては、こういった規定をおいて取り締まる必要があるだけの、悲惨な事例が多かったものと思われます。
現在、時々見受けられるのは、6号、7号、9号で(このあたりが、奥村弁護士のブログに登場する可能性が高い類型です)、5号も、飲食店によっては抵触する可能性があります。
私の印象としては、元々、6号、9号は、売春宿のようなところで児童を酷使するような行為を処罰する規定、7号は、昔の「人買い」のようなブローカーを処罰するための規定として設けられたのではないか、と思っていますが、現在は、処罰対象が現代的になっていて、例えば、下記のエントリにあるような行為が、9号該当として起訴の対象になったりしています。
昔々、ある地検にいた際、暴力団事務所に児童を住み込ませ事務所当番などをさせていた、という事件(9号の有害目的支配)が警察から送致され、私が応援検事として「被害」児童を調べたところ、小遣いはくれるし、服も買ってくれるし、楽しくて仕方がなかった、などと言っていて、「被害性」を出すのに苦心したことがありました。先輩の主任検事に報告したところ、そうやって児童を堕落させて行くところが有害そのものだ、などと言われて、なるほど、と納得した記憶があります。
被疑者(暴力団員)は、「有害目的支配」という言葉に、かなりこだわって否認していて、先輩の主任検事が、「暴力団事務所に住み込んで事務所当番などしていたら、まともな大人になれないだろう?違うか?」などと、懇々と説教しながら取り調べていたことが、懐かしく思い出されます。