朝鮮総連が売買契約1か月前に4億支払い、仲介の元社長に

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070620i101.htm?from=main1

私自身、当初、「事件性」に疑問を感じていましたが、その後の報道を見る中で、内容によっては事件性が生じる可能性もある、という印象を持つようになりました(疑問は依然として感じていますが)。
いくつかのポイントと考えられることとしては、

1 朝鮮総連側と仲介者側の意図、その後の仲介者を中心とした動き

 ここが最大のポイントですが、民事判決目前の状況の中で、真に「売却」やその「仲介」を意図していたのか、そうではなくて、「売買の仮装」により強制執行等を免れることを意図していたのか、そこが、当然、問題になります。報道では、仲介者であった人物が、連日、東京地検特捜部による事情聴取を受けている、とのことですが、ここが「売買」やその「仲介」ということになれば、事件性の大部分は崩れてしまうところだと思いますから、特捜部が注目するのは当然でしょう。
 動いた巨額の金の趣旨、仲介者が実際にどのような動きをしていたか、ということも、上記の点を評価する上で重要です。

2 元公安庁長官、元日弁連会長の関与状況、共犯性

 1で「売買の仮装」という認定がなされた場合には、元公安庁長官(以下、「元長官」と言います。)や元日弁連会長(以下、「元会長」と言います。)の関与状況、共犯性が問題になります。
 誤解とはいえ真意に基づく「売買」という認識だったのか、そうではなく、「売買の仮装」という認識に基づいて協力していたのか、当然、厳しく問われることになります。前者である、ということになった場合、元長官や元会長が共犯からはずれてくる、という可能性もありますが、法律のプロが、それも元長官や元会長という立場で、「知らなかった」「利用された」で簡単には済まないでしょう。

3 身柄の取り扱い

 今後、立件される可能性は高いようですが、通常、一般的に、これだけの関係者がいて、解明すべき点が多いと、関係者を一斉に逮捕、勾留して真相を解明し、刑事処分を決める、ということになります。
 ただ、関係者の中に、元長官、元会長という人物までいて、そういった人物まで身柄になれば、法曹界としての一大不祥事になりますから、検察庁としては、身柄の取り扱いを慎重に検討することになるでしょう。
 歴史に残る汚点になっても、真剣に真相解明を目指すためには、筋を通して、身柄にすべき人物は身柄にする、ということを避けて通るべきではなく、元長官、元会長ということで、特別扱いすべきではありません。ただ、上記2で指摘したような可能性については、慎重に検討すべきでしょう。
 事件として見込みがある、という判断に達し、身柄事件として捜査するのであれば、6月下旬から7月上旬までには着手して、夏休み期間中前に刑事処分を出し捜査終結、という、かなり早い展開になる可能性もあると思います。時間が経過すれば、罪証隠滅等の恐れが増大しますから、身柄事件にするなら、それほど間をおくべきではない、という判断がされる可能性があります。
 なお、刑事処分を決する場合、起訴すべき者がいれば、問題となっている犯罪(強制執行妨害罪等)には罰金刑もあり、略式手続により罰金刑に処するか、公判請求して懲役刑まで求めるか、といったことについて、共犯者中の均衡も考慮しつつ決める、ということになりますが、いろいろな意味で、なかなか悩ましいことになる可能性もあると思います。
 関係者を一斉に逮捕、勾留するということになった場合であっても、認識の欠如、希薄さや関与程度の低さなどから、不起訴処分(起訴猶予等)になる者も出てくることはあり得ます。元長官や元会長としては、立件されるとしても、身柄は不拘束、処分は不起訴で、と願っているかもしれません。「落としどころ」を探りながらの水面下でのやりとり、駆け引きが、既に始まっている、ということも十分あり得ることです。