変死の解剖、わずか9%…犯罪・欠陥事故見逃しの恐れ

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070517it01.htm

指宿教授のブログ経由で知りました。

http://imak.exblog.jp/5599002/

同ブログでも指摘されていますが、このあたりは、かなり問題がある分野ではないかと私も思います。
変死体については、刑事訴訟法上、検察官が検視を行うことになっているものの、実務上は、ほぼすべて、警察が代行して検視を行っています。
以前、ある地検にいた際、どうも死体の状況が不自然な変死体があり、私が当直で報告を受けたので、司法解剖すべきではないかと警察に意見を述べたところ、解剖するのが面倒だったのか、何だかんだと文句を言って抵抗し、結局、次席検事のほうで解剖の可否を判断する、ということになり、検討の結果、解剖を行わなかった、ということがありました。私の手を離れた後の検討状況まではわかりませんが、解剖してみないとわからないことは当然あるはずで、解剖する前から、しないという結論を出してしまう警察の対応には強い疑問を感じました。ただ、だからといって、検察庁として令状を請求し解剖を実施するか、というと、そこまで濃厚な嫌疑があったわけでもなく、この種の事例は少なくないのではないかと思います。そういった「グレー」な事例のうちに、何らかの犯罪によるものが隠れている、ということは、当然、あるでしょう。
これは、上記の記事で、

日本法医学会員らは、解剖率が低いと、〈1〉死因の判断ミスが増え、犯罪が見逃される〈2〉伝染病などが見逃されて公衆衛生上の危険がある〈3〉死に至るメカニズムが解明されず、ガス器具による中毒事故の多発などが気づかれない――と指摘。
実際に、茨城県で2000年に起きた保険金殺人事件では、強い酒を飲まされて殺されたとされる男性が解剖されないまま病死とされ、被告の1人が上申書で告白するまで事件が発覚しなかった。

とされている通りであり、解剖されないまま処理されてしまった死体について、後日、犯罪によるものであることが判明した事例は、過去に何件も起きています。
こういった問題は、刑事だけでなく、人の死が問題になる民事その他の事件にも関わってきます。
その意味では、日本でも検死官制度のような制度を整備して、人の死が、きちんと原因を究明され、その結果を利用すべき場面で適切に利用できる、という仕組みにして行く必要性が高いと言えると思います。