ネットオークション詐欺で無罪=赤字発送も、犯意に疑い−神戸地裁

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070423-00000186-jij-soci

佐野裁判官は、被告がオークション取引で赤字だったことを認識しながら、デザイン関係など他の仕事による収益で補てんし、商品を仕入れて落札者に発送できると考えていた可能性もあると指摘。「商品を発送できないかもしれないと認識していたとはいえない」として、検察側の主張を退けた。 

いわゆる「チャリンカー詐欺」ですが、この種の自転車操業の中での詐欺事案は、故意(犯意)が否認されやすく、かつ、立証もなかなか難しい面があって、告訴や被害届があっても、なかなか立件、起訴まで至らない場合が多いものです。それだけに、この種の事件について、きちんとした捜査ができるようになれば、捜査官としてはかなりの力があると言えるでしょう。
しがない弁護士である私が言うのもどうかとは思いますが、この種事案にあっては、

1 当時の収益状況を徹底的に解明する(破綻状態に立ち至ったのはいつかを明確化)
2 代金支払があっても、それに見合った仕入や商品送付が客観的に困難(単なる「困難」では足りず、不可能に限りなく近い「著しい困難」である必要があるでしょう、一連の流れの中で、そのような状況にまで立ち至ったのはどの時点か、の見極めが不可欠です)
3 上記の1や2について、被疑者の認識状況を克明に証拠化する
4 上記の1や2の状況下において、被疑者が、詐欺の犯意を抱いていたことを推認させる状況証拠の収集(当時の言動など)
5 被疑者の弁解を丹念に証拠化した上で、それを排斥する証拠の収集

といったことを、丹念に行う必要があります。かなりの手間暇がかかる捜査である上、「絵を描く」能力が必要で、難易度には相当高いものがあります。
上記の事件で、どこまで捜査が尽くされていたかはわかりませんが、「デザイン関係など他の仕事による収益で補てんし、商品を仕入れて落札者に発送できると考えていた可能性」が認定されているということは、その点が排斥できていないということであり、十分な捜査が行われていなかった可能性は高いでしょう。