デンソー中国人技術者釈放 処分保留、データ横領事件

http://kumanichi.com/news/kyodo/index.cfm?id=20070406000210&cid=social

社員の自宅などから私有パソコンや記憶媒体を押収したが、破壊されたりしていたためデータのコピーや譲渡先の有無を確認する物証が得られなかった。地検は、起訴は困難と判断したとみられる。

先日、この事件について、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070319#1174275969

とコメントしたものを見た某新聞社の記者から、一昨日、電話で取材を受け、どうも起訴は難しいかもしれない、という印象を受けましたが、昨日、処分保留で釈放になった、とのことで、今後、起訴猶予になる見込みのようです。
上記の記者からは昨日も電話で取材を受け、一昨日、昨日と電話でいろいろと話をしたのですが、私が言ったのは、

1 情報の不正取得自体が犯罪に問われているのではなく、PCについての「横領」という、事件の本質を外したところで犯罪の成否が問題になっているというところに、そもそも事件としての限界がある
2 社内規定等で、社外へのPC持ち出しが禁止されていたとしても、自宅に仕事を持ち帰るためにPCを持ち出すことが慣行となって黙認されている場合もあり、「自宅で仕事をするために持ち出した」という供述がある場合、内規違反があるからといって、不法領得意思を直ちには肯定しにくいし、そういった行為を、即、横領等には問いにくい
3 PCの持ち出しについて、違法な目的以外のものも含まれている(少なくとも、そういう弁解をつぶしきれない)のであれば、物証等の客観的な裏付けも得られないと、起訴後の公判維持が困難かもしれないし、この種の外事・公安事件では、一般の刑事事件以上に、起訴・不起訴の判断時に証拠はシビアに見るものである

といったことでした。
あくまで推測にしか過ぎませんが、上記の1から3あたりに、処分保留となった理由があるような気がしています。

追記:

上記のコメントが、平成19年4月7日読売新聞社会面の、「デンソー事件 中国人社員の立件断念 起訴猶予へ データ流出解明できず」という記事の中で

公安事件の捜査経験がある落合洋司弁護士は、「(法適用には)企業が保有する機密情報の範囲や情報持ち出しの目的について、厳格な立証が必要で、立件へのハードルは極めて高い」とし、『情報の窃盗』を適切に取り締まることが可能な立法措置をとる必要がある」と指摘する。

とまとめられていました。
最後の部分は、「適切に取り締まることができれば」という条件付き、ということで、そのハードルにはかなり高いものがあるということを補足しておきます。