[匿名掲示板]「中傷“無法地帯”は放置できない」

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070401ig90.htm

読売の社説ですが、内容は、私のようなしがない弁護士でも書ける程度のもので、特に目新しい内容はありません。
ただ、気になったのは、

現行の法制度でネット上の不正に対処するには限界がある。
かつて、住宅金融専門会社の債権回収が問題になった時、預金保険機構に強制調査権限を付与する法律を整備し、不良債務者の資産を徹底的に洗い出した。こうした特別立法で、ネットの分野に限った手だてを講じるのは一案だろう。

です。
どのような「特別立法」を考えているのか知りませんが、このようなことを安易に放言するのは危険だと思います。「強制調査権限」を、もしかしたら警察にでも付与しようとでも言うのでしょうか?
戦前でも、「怪しからん米英を懲らしめるべきだ」などと、国民を盛んに扇動して、無謀な戦争への露払い役、幇間役を務めたのは新聞等のマスコミでした。
歴史は繰り返す、と言いますが、やはりそういうものなのかもしれません。
私は、こういった問題について、必要かつやむをえない規制には反対しませんが、一般利用者に対する過度な負担をかけ、その権利を侵害しかねない規制や、実効性や合理性に疑問がある規制には断固反対します。読売には、読者の大多数が、違法・不当な行為とは無縁でインターネットを楽しむ人々であり、「特別立法」といったものが、そういった善良な人々にも負担をかけるものになる、という視点を、1日も早く持ってもらいたいと思います。

追記1:

一般の人々が、「匿名性」が完全に確保され何をやっても特定されない、と思い込んでいる分野でも、実は警察が匿名性の壁を乗り越えて犯人検挙につながっている、ということは少なくありません。インターネットカフェも、一見、本人確認をせず利用者が特定できないように思えても、実際は、いろいろな捜査を駆使することで特定されている場合があります(詳細は、公益上の理由もあり、ここでは明らかにしません)。どうしても知りたい人は、警察庁総合セキュリティ対策会議のメンバーにでも聞いてみてください。そういった人々は、そのような捜査の実態を十分踏まえた上で、提言等を行っているはずですから。
それで十分なのか、ということは、当然、問題になりますが、上記のような「思い込み」を前提にした議論をしてしまうと、議論の前提が誤っている、ということになるでしょう。

追記2:

警察が、「我々は無力です、もっと手段を下さい」と言っている場合、文字通りである場合と、オーバーに言っている場合がありますから、単に文字になっていることを追っているだけでは実態を見誤る恐れがあります。見誤っているだけであれば、見誤っている人だけの問題で済みますが、それなりに影響力がある立場でそういった誤りを犯すと、事が単純なものでは済まなくなる場合もあります。自重自戒を含め、そのことを改めて強く感じます。