玄関ドアは「建造物」=「機能も考慮」と基準示す−損壊罪成立で初判断・最高裁

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2007032400057

最高裁第1小法廷(甲斐中辰夫裁判長)は24日までに、「建造物といえるかどうかは、建物との接合の程度のほか、機能上の重要性も総合考慮して決めるべきだ」との初判断を示した。
その上で、玄関ドアについて「外壁と接合している上、外界との遮断、防犯や音、風を防ぐ重要な役割も果たしている」として同罪の成立を認め、器物損壊罪にとどまるとする弁護側主張を退けた。

手元にある

刑法各論

刑法各論

の349ページから350ページを見ると、

敷居・鴨居のように建造物の一部を組成し、建造物を損壊しなければ取り外すことのできない物を損壊する行為は建造物等損害罪にあたる

これに対し、雨戸・板戸のように損壊することなく自由に取り外しできる物を損壊する行為は、建造物等損壊罪ではなく器物損壊罪にあたる

として、それぞれ判例が紹介された上で、高裁裁判例として(大阪高判平成5年7月7日高刑集46巻2号220頁)、住宅のアルミ製玄関ドアが建造物の一部と判断された事例が紹介されています。
以前、引越の際に、自宅の玄関ドアを、引越業者が簡単に取り外して荷物を通しやすいようにしたので驚いたことがありますが、玄関ドアは、建造物を損壊しなくてもそれほど困難もなく取り外せるものです。しかし、だからと言って形式的に、建造物の一部にあたらない、とするのもどうかと思われます。
山口説としては、「取り外しの容易性とともに、当該部分の建造物における意義・重要度も考慮されるべきだと思われる」とされていて(私もそのように考えるべきと思います)、上記の高裁裁判例も、そのような観点で見ていると思われますが、この点に関する最高裁判例がなかったようであり、その意味で、上記の最高裁の判断が今後の実務に及ぼす影響は小さくないと思います。

追記(2007年6月14日):

判例時報平成19年6月11日号で、上記判例が紹介されていました。コメントが詳細で参考になります。