ロンドンにおける見学(3日目)

3日目(水曜日)。今日は、ロンドン市内にあるNGOの見学でした。午前中は、プリズン・リフォーム・トラストへ行き、担当者からお話を聞きました。NGOとして、人的にも予算面でも政府から独立して活動しつつも、メンバーの中には、女王陛下の元プライベート・セクレタリーがいるなど、かなり力のある人々も参加しており、刑務所内の処遇環境、人権問題、少数民族への処遇、受刑者やその家族に対する支援、コミュニティにおける犯罪の問題などに取り組んでいる状況が紹介されました。「スマートジャスティス」ということが提唱されていて、刑事司法、刑事手続について、一般の人々を啓発しその考え方に変革を求めて行く、ということも重視されているとのことで、そのための各種広報活動も積極的に行っている状況が紹介されていました。ここでも、過剰収容の問題の深刻さが語られ、その原因として、担当者は、政治家や国民が、リスクを取らず受刑者の拘禁にこだわることが、さらにリスクを高めてしまっている、ということを指摘していて、うなずけるものがありました。
午後は、まず、インクエストという団体の事務所を訪問しました。1981年に、刑務施設に収容中に死亡した人の遺族が中心となって設立されたNGOで、刑務施設内での不審死について、死亡者の親族や友人の側に立って各種支援(相談、弁護士の紹介、検死法廷への立会など)を行い、今後の教訓、予防に役立てることを目指していることが紹介されました。
英国の検死に関するコロナー制度には、古くからの歴史があり、いろいろな問題点も指摘されているようですが、どのような状況下で死亡したかを明らかにするという要請が強くなり、以前は数日で終了していたものが、現在は数週間かかる場合もある、とのことでした。コロナー制度について検索していたところ、
http://web.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~legal/topix01b.htm
があり、参考になると思いました。
その後、ジャスティスという団体の事務所へ行って、担当者のお話をうかがいました。この団体は、1957年に、人権問題に強い関心を持つ弁護士によって設立され、刑務所問題や刑事司法の問題だけでなく、広く法律改正や人権擁護全般の問題を扱っている、国会、政治家に対するロビー活動、情報提供も行っているとのことでした。
担当者からは、最近の英国内の傾向として、一般国民の治安に対する期待が高まり厳罰化、過剰収容化へとつながっていることや、そういった傾向の中で、ASBO(Anti-Social Behaviour Order、「アズボ」)が濫発される傾向にあることなどが指摘されていました。
今日一日の見学で感じたのは、英国では、NGOの分野でも、優秀な人材が参加して活発な活動が行われ、刑事司法や刑務所問題等について、重要な貢献が行われている、ということで、もちろん、日本でもそういった取り組みを行っている人や団体も存在しますが、層の厚さや影響力に格段の違いがあるのではないかと感じました。