http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060322/eve_____sya_____000.shtml
飯田喜信裁判長は「被告が債券を犯罪収益と認識していたと、合理的疑いを超える立証がなされていない」として無罪(求刑懲役三年、罰金三百万円)を言い渡した。
適用が問題になったのは、この条文と思われます。
(犯罪収益等隠匿)
第十条
1 犯罪収益等(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律第二条第二項 に規定する罪に係る資金を除く。以下この項及び次条において同じ。)の取得若しくは処分につき事実を仮装し、又は犯罪収益等を隠匿した者は、五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。犯罪収益(同法第二条第二項 に規定する罪に係る資金を除く。)の発生の原因につき事実を仮装した者も、同様とする。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
3 第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
また、何が「犯罪収益等」に該当するかについては、第2条第3項で、
この法律において「犯罪収益等」とは、犯罪収益、犯罪収益に由来する財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産をいう。
とされています。
犯罪収益とは、第2条第2項で、
一 財産上の不正な利益を得る目的で犯した別表に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産
二 次に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばイ、ロ又はニに掲げる罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により提供された資金
イ 覚せい剤取締法 (昭和二十六年法律第二百五十二号)第四十一条の十 (覚せい剤原料の輸入等に係る資金等の提供等)の罪
ロ 売春防止法 (昭和三十一年法律第百十八号)第十三条 (資金等の提供)の罪
ハ 銃砲刀剣類所持等取締法 (昭和三十三年法律第六号)第三十一条の十三 (資金等の提供)の罪
ニ サリン等による人身被害の防止に関する法律 (平成七年法律第七十八号)第七条 (資金等の提供)の罪
三 不正競争防止法 (平成五年法律第四十七号)第十一条第一項 の違反行為に係る同法第十四条第一項第七号 (外国公務員等に対する不正の利益の供与等)の罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならば、当該罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により供与された財産
四 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律 (平成十四年法律第六十七号)第二条 (資金提供)に規定する罪に係る資金
とされ、「犯罪収益に由来する財産」とは、第2条第3項で、
犯罪収益の果実として得た財産、犯罪収益の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他犯罪収益の保有又は処分に基づき得た財産をいう。
とされています。
やや引用が長くなりましたが、「犯罪収益等」に該当するものは、かなり広範囲にわたる、ということができるでしょう。
具体的な証拠関係がよくわかりませんが、報道によると、検察庁は、信用性が否定されてしまった「共犯者」の証言を重視していたようですが、上記の通り、犯罪収益等が、かなり広範囲にわたるものなので、被告人がその認識を否定しても、状況証拠の活用等で、有罪立証は十分可能と踏んでいたのかもしれません。
今後、最終的にどのような形で確定するか、よくわかりませんが(検察庁が控訴する可能性は高いでしょう)、犯罪立証の上で、認識、犯意といった主観的要素を的確に立証する難しさを示す一事例になったことは確かだと思います。