http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060321/mng_____sya_____006.shtml
判決は事故原因について、羽田発那覇行き907便と釜山発成田行き958便が接近した際、蜂谷被告が便名を言い間違えて907便に下降指示を出した直後、両機の衝突防止装置(TCAS)が907便に上昇を、958便に下降を指示。907便はTCASに反し管制官の指示通り下降、958便はTCASに従い下降し、ニアミスが起こったと認定した。
907便は衝突回避のため急降下し、958便とニアミス。907便の乗員・乗客八十三人が重軽傷を負った。検察側論告によると、両機の距離は接近時、約十メートルだった。
安井裁判長は「TCASが指示を出さなければ、両機は千フィート(約三百五メートル)の垂直間隔が確保され、接触・衝突する危険性は生じなかった。管制官には、TCASの指示を踏まえて管制指示することまでは求められていない」と述べた。
安全な垂直間隔を最低二千フィート(約六百十メートル)とする国交省の基準(当時)について、安井裁判長は「管制基準上と刑法上の注意義務は必ずしも一致しない。基準を欠くと接触・衝突の危険が生じるという検察側の主張はそのまま認定できない」と指摘した。
TCASの指示に従わなかった907便の機長の判断も「降下直後に上昇すると失速の危険がある、と判断したことはやむを得ない」とした。
判決文を読んでみないと、何とも評価しにくいのですが、結局、予見可能性の問題なのかな、という印象を持ちました。
ただ、素朴な疑問として感じるのは、管制官に、重大な(軽微とは言えないでしょう)ミスがあり、その後、上記の衝突防止装置(TCAS)とパイロットの判断が、絡み合った糸のような状態になって大混乱に陥り、危うく衝突、という事態が生じたことについて、「TCASが指示を出さなければ、(中略)接触・衝突する危険性は生じなかった。」などと済ませてしまってよいのか、ということでしょう。衝突防止装置というものが備え付けられた飛行機が飛んでいて、誤った管制官の指示と装置の指示がバッティングするという事態が生じてしまった場合に、その事態を作り出したとも言える管制官に過失が認められない、というのは、非常にわかりにくいですね。
因果関係の問題にしても、管制官のミスがあったからこそ、その後、様々なことが起きているわけで、否定するのは、分断的思考に過ぎるのでは?という印象を受けます。
こういった事実認定や法律評価については、証拠を見ていない立場からは限界があり、疑問の指摘にとどめたいと思いますが、おそらく東京地検は控訴すると予想されますから、控訴審の行方が非常に注目されます。