「ウェブ進化論」(梅田望夫・著)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる

先日、著者の梅田氏のご好意により1冊いただき、最近、読み終えました。新書なので、それほど時間をかけることなく読み切れるだろうと思っていたのですが、なかなか中身が濃い本で、考えながら読んだということもあって、読み切るまで思ったよりも時間がかかりました。
私なりの読後感を述べると、今後のインターネットの世界は、ごく一般の人々が、ごく当たり前に、生活の一部として利用するとともに、従来のように受け身で情報を受容する存在にとどまらず、ますます能動的、積極的に参加して行く、ということでしょう。話題のWeb2.0も、正にそういう状況の中で、インターネットの利便性を高め、大きなビジネスチャンスを見出して行くというものではないかと、ウェブ進化論を読み、改めて思いました。
ただ、そのように、大きく伸びようとする流れの一方で、既存の制度や既得権等にしがみつき、新しい流れを敵視してつぶそうとする動きも、当分の間、確実に根強く残ることでしょう。
ウェブ進化論の中で、著者は、

日本の場合、インフラは世界一になったが、インターネットは善悪でいえば「悪」、清濁では「濁」、可能性よりは危険の方にばかり目を向ける。良くも悪くもネットをネットたらしめている「開放性」を著しく限定する形で、リアル社会に重きを置いた秩序を維持しようとする。

と喝破していますが(21頁)、ウイニー問題(特に刑事事件としての起訴)にしても、その他の様々な問題にしても、上記のような視点に立つと、本質や関係者(特に「リアル社会に重きを置いた秩序を維持しようとする人々」)の思惑が透けて見えてくるように思います。
この種の本には、独りよがりな内容で読むに値しないものが少なくありませんが、ウェブ進化論では、現在のインターネットの世界で「起きていること」「これから起きようとしていること」が、非常に具体的に紹介されていて、非常に充実した読後感を味わうことができました。