副社長の他殺説、国家公安委員長が否定…衆院委

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060207i415.htm

沓掛委員長は「沖縄県警は、現場の状況、行政解剖の結果や、関係者からの事情聴取など様々な角度から判断した」と述べた。

ライブドアに対する強制捜査開始の直後、沖縄で死亡したライブドア元幹部の件です。
変死体(犯罪に起因するのではないかとの疑いがある死体)が発見された場合、刑事訴訟法上は、検察官が検視を行うことになっていますが、実際は警察に代行させる(代行検視)のが普通です。
自殺を思わせる変死体が発見された場合、他殺かどうか、自殺としても第三者の関与がないかどうか(自殺関与罪成立の可能性が出てくる)が重要になりますが、大きなポイントは、他殺かどうかでしょう。
具体的状況にもよりますが、一般的には
1 現場の客観的状況(密室など第三者が関与しえない状況か、本人によるものではない創傷がないか、等々)
2 死亡推定時刻前後の本人の行動(他殺を疑わせる事情は認められないか)
3 自殺の動機の有無、内容(遺書があればその内容、家族からの聴取結果など)
といった点が問題になるでしょう。
本件では、「疑惑」がいろいろと報道されていますが、沖縄県警としても、東京地検特捜部が強制捜査に着手した後の関係者の自殺であり、いい加減な検視を行うことに何のメリットもないので、通常一般的に行われていることは一通り行っていると思われますし、行政解剖は行っているとのことですから、それなりに慎重に臨んでいることはうかがわれます。
過去に、自殺か他殺かが大問題になった事件で思い起こされるのは、下山事件でしょう。本ブログでも言及したことがありますが、戦後間もなく、下山国鉄総裁が轢断死体で発見された事件です。
下山事件に関する本を読んだことがありますが、やはり、上記の1から3の点が問題になっており、自殺をうかがわせる状況がある一歩で、他殺ではないか、という疑いを抱かせる事情もあって、今に至るまで、戦後史に残る謎、と言われています。亡くなった布施元検事総長下山事件の主任検事)が他殺説に立っていたと言われているのは有名な話です。
ロッキード事件の際には、田中角栄元首相の下で働いていた運転手が、取調べを受ける中で排気ガス自殺して、この件も、他殺ではないか、とささやかれ、今なお、他殺説に立つ人もいるようです。当時の事情を書いた本を読んだことがありますが、その件でも、自殺をうかがわせる事情がある一歩で、「こういう行動をとっていた人が自ら死を選ぶのか?」と思わせる事情もあって、他殺説が出るのも無理はないかな、という印象を持った記憶があります。
自殺する人の心理状況を100パーセント解明するのは非常に難しく、例えば、死の直前に、他人と会う約束をしていたからと言って、直ちに自殺ではなく他殺とも決めつけられません(約束した後に自殺を決意した可能性もあります)。
刑事事件の捜査の過程で自殺者が出れば、捜査に大きな影響が出る可能性もあり、また、関係者にも大きな悔いが残ります。
捜査を進める上で、自殺を含む事故を起こさない、ということが、捜査機関には強く要請されると言えるでしょう。