]「実務」法曹養成と「学問」(後)

先に、

「実務」法曹養成と「学問」(前)
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20051117#1132239537

と述べましたが、では、今後、どういった方向へ進むべきかが問題になります。
以前、

ロースクール教員としての感想
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20040923#p1

で、

1 ロースクールは、極めて良質のもの(10校程度)を除いて廃止し、新ロースクールは、法曹界の中核を担う特に優秀な人材の養成機関とする。入学者は、司法修習終了後、一定の期間、実務を経た者とする。廃止されたロースクールのうち、可能なものは、従来型の法学部に転換するか、既存の法学部に吸収する。
2 全国の高裁・高検所在地に、司法研修所分室を置き、司法修習生3000名程度を受け入れ可能な態勢を作り、修習期間については2年に戻す。
3 司法修習生については、「弁護士補」といった資格を新設し、有料の法律相談や弁護士と共同による事件処理などを可能にして、一定の収入を確保できるようにした上で、給費制については、給費水準を従来よりも落としつつ維持する。

といったプランを提唱したことがありますが、基本的には、そういった方向で見直すべきではないかと考えています。
日本のように、研究者と実務家との間で共通の基盤が非常に乏しく、法曹養成の大半を、一部の法学部における課外活動、受験団体・サークル、予備校、司法研修所が担ってきた国において、いきなり法科大学院を始め、研究に専念してきた人々に法曹養成の一翼を担わせようというのが、そもそも無理な話であり、うまく機能しないのも当然といえば当然です。
このまま現在の状態を維持しようとすれば、無理に無理を重ねることになり、様々な弊害や歪みがますますひどくなることは確実でしょう。
上記の1については、既にできている法科大学院を廃止するのも難しい、ということであれば、研究活動を中心としつつ、各地の司法研修所分室と協力関係を持つ、実務法曹の生涯教育を担う組織として活用する、というのも、1つの方法ではないかと思います。裁判所や検察庁では、任官後の教育体制がそれなりに整備されていますが、弁護士会の場合は、お世辞にも充実しているとは言えず、特に、今後、法曹人口が増大する時代になれば、実務家になった後の継続的な教育が今まで以上に求められることになるでしょう。実務家ですから、それなりの収入はあり、授業料も支払えるはずなので(ごく一部に弁護士会の会費も払えない、という例外もありますが)、そういった収入を原資にしつつ、法律学と実務を架橋する存在として、法科大学院を活用する、ということも考えてみてよいと思います。教員も、実務家からどんどん登用すればよいでしょう。
上記の2については、「3000名」という人数について、改めて考えてみる必要があると思います。

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20060119#1137605216

でも述べたとおり、不適格者が大量に存在した状態で、大量の不適格者が絶えず流入しつつ、激越な自由競争が行われることになれば、不適格者が淘汰される過程において、国民に重大、甚大な被害が生じることは確実です。そうならないために、国民に対してサービスを提供する前段階において、適切な選抜、教育、試験を行い、実務に就いた後も不適格者を排除する仕組みを整備することは、避けて通れないと思います。
その一方で、日本において、国民が必要とする法律家(隣接法律職を除いて)は果たしてどの程度なのか、ということも、単に外国ではこの程度存在しているから、といった大雑把な議論ではなく、日本の実情も踏まえた上での検証、検討が行われるべきでしょう。
その結果、3000名では足りない、5000名、あるいは9000名まで増やすべきだ、ということになれば、現行の教育システムでは極めて困難ですが、従来のシステムを大幅に見直し、増員に対応すればよく、さらなる大幅増員を最初から否定することも正しいとは言えないと私は考えています。

(一応、終わり)