分派の「天理教」名称使用、差し止め請求を最高裁棄却

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060120i515.htm?from=main5

最高裁のサイトにもアップされています。

http://courtdomino2.courts.go.jp/judge.nsf/dc6df38c7aabdcb149256a6a00167303/118478ed90b06655492570fc002c6afc?OpenDocument

この判例には、いろいろと興味深い点があると思うのですが、特に参考になると思ったのは、宗教法人の氏名権(人格権の一環としての)を肯定した上で、

他方で,宗教法人は,その名称に係る人格的利益の一内容として,名称を自由に選定し,使用する自由(以下「名称使用の自由」という。)を有するものというべきである。そして,宗教法人においては,その教義を簡潔に示す語を冠した名称が使用されることが多いが,これは,宗教法人がその教義によって他の宗教の宗教法人と識別される性格を有するからであると考えられるのであって,そのような名称を使用する合理性,必要性を認めることができる。したがって,宗教法人の名称使用の自由には,その教義を簡潔に示す語を冠した名称を使用することも含まれるものというべきである。そして,ある宗教法人(甲宗教法人)の名称の保護は,他方において,他の宗教法人(乙宗教法人)の名称使用の自由の制約を伴うことになるのであるから,上記差止めの可否の判断に当たっては,乙宗教法人の名称使用の自由に対する配慮が不可欠となる。特に,甲,乙両宗教法人の名称にそれぞれその教義を示す語が使用されている場合,上記差止めの可否の判断に際し,単に両者の名称の同一性又は類似性のみに着目するとすれば,名称使用の自由を制限される乙宗教法人は,その宗教活動を不当に制限されるという重大な不利益を受けることになりかねず,また,宗教法人法が宗教法人の名称につき同一又は類似の名称の使用を禁止する規定を設けなかった立法政策にも沿わないことになる。
 したがって,甲宗教法人の名称と同一又は類似の名称を乙宗教法人が使用している場合において,当該行為が甲宗教法人の名称を冒用されない権利を違法に侵害するものであるか否かは,乙宗教法人の名称使用の自由に配慮し,両者の名称の同一性又は類似性だけでなく,甲宗教法人の名称の周知性の有無,程度,双方の名称の識別可能性,乙宗教法人において当該名称を使用するに至った経緯,その使用態様等の諸事情を総合考慮して判断されなければならない。

と判示している点です。
この種の紛争は、過去に少なくなく、また、今後も起きる可能性があり、最高裁が、具体的な判断基準(双方の利益を考慮すべき、ということで概ね妥当でしょう)を示したことは、今後の同種紛争解決の上で、かなりの影響があるのではないかと思います。