録画ネット事件・抗告審決定

http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/842BD42DCC4020FC492570C100253DFF/?OpenDocument

この事件の本筋からは、やや、はずれますが、次の一節が目にとまりました。

(10) 事実認定の補足説明
なお,抗告人は,本件サービスにおいてテレビパソコンの所有権は利用者に移転している旨主張する。しかしながら,前記認定のとおり,本件サービスにおけるテレビパソコンは,①抗告人の調達したものに限られるとともに,抗告人の管理下に設置され,抗告人事務所内において本件サービスの用に供することのみしか認められていない,②故障の場合,抗告人の費用で修理を行うこととされている,③契約終了時において,他の利用者への無償での「譲渡」という通常の取引形態では考え難い選択肢が用意されている,④契約終了後にテレビパソコンの「返却」を受ける場合には,ハードディスクを初期化することとされている,というのである。これらの事情によれば,本件サービスにおいて,テレビパソコンを自由に使用,収益及び処分することができる権利(所有権)(民法206条)が利用者に移転しているということはできず,所有権の移転が仮装されているにすぎないというべきである。

インターネット上での権利主張を行いたいがために、「所有権」構成をとる人が少なくありませんが、実際、実態は、他人に渡しきりで「譲渡」してしまっている物について、「所有権を留保している。」と強弁する場合が少なくありません。
そういう主張を過去にしたことがある人、今している人、今後しようと思っている人は、実際、実態に反した権利主張は裁判所の容れるところにならないことを認識したほうがよいと思います。「所有権の移転が仮装されているにすぎない。」と言われる場合があるように、「所有権の留保が仮装されているにすぎない。」と、裁判所により一蹴される恐れということも、考えてみるべき場合があるでしょう。
なお、録画ネット事件に関する上記認定自体の当否は、私自身、証拠を見ていないので、何とも言えません。