<詐欺募金>被害4000万円、任意団体代表を再逮捕

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050730-00000033-mai-soci

不特定多数を被害者にして「詐欺募金」を立件したのは全国で初めて。

詐欺罪は、被害者に対する欺く行為、それに基づく錯誤、錯誤に基づく処分行為があって成立しますから、通常は、被害者が特定されている必要があります(そうでないと、上記のような要件のうち、錯誤やそれに基づく処分行為の存在が立証できないでしょう)。
ただ、本件の場合、募金に応じる人々は、社会的弱者等のために使ってほしいと思っているからこそ、募金しており、一部であっても個人的な遊興等に使うのであれば募金しないであろうということが、定型的に明確であると言えると思います。要するに、被害者が特定されていなくても、「募金」という形態ということで、即、上記の錯誤やそれに基づく処分行為の存在は立証できる可能性が高いでしょう。
そうなると、一定期間の募金収入を騙取額と認定して、被害者不特定のまま、全体を詐欺罪として立件することも、前例はないものの、不可能ではないかもしれない、という気はします。
大阪府警としても、大阪地検とは十分協議の上でのこととは思いますが、今後の処分結果が注目されます。

追記:

奥村先生もこの事件に注目されていますが、おそらくポイントは、一定期間の募金額が特定されて、その中に募金以外のお金が入っていないと認定できるかどうかだと思います。
他の性質のお金が入っている可能性があれば、被害者の特定が求められざるをえないはずですが、他の性質のお金が入っていなければ、「募金」という性質から、被害者を特定しないままでの訴因が許容されることは十分ありえます。
ただ、その場合であっても、被害者ごとに1罪が成立するという前提は、なかなか変えることが難しいと思われるので、いくつの詐欺罪が成立するかがわからない以上、やはり訴因として不特定ではないかという問題は残るでしょう。
この種の犯罪については、包括一罪と見る必要性が高いかもしれません。