日本刑法学会大会(札幌)・2日目午後後半

平野龍一先生追悼企画の後、13のワークショップが行われ、私は、「不正融資における借手の刑事責任(背任罪・特別背任罪)」に参加しました。
貸し手が上記のような犯罪に問われる場合であっても、「貸してください」と頼んだ借り手に刑事責任が発生するか、どのような場合に発生するかは、重要な問題です。安易に刑事責任を認めてしまうと、非常に過酷、非常識な結論になりかねません。近時、借り手について無罪とした裁判例も出ており、非常にタイムリーなテーマであると思って、参加してみました。
会場には、著名な刑法学者の方々や、法務省勤務の同期の検事もいて(帰りに一緒にお茶しました)、この問題に対する関心の高さを感じました。
運営された先生方から、最近の裁判例や理論状況に関する解説があり、その後、質疑応答も行われ、参考になりました。
実は、この問題は、京都地裁で審理中のwinny幇助犯の公判にも関連する部分があります。融資を依頼する、役に立つが悪用も可能なソフトを開発する、といった、日常的・中立的行為を行った者が、思いもかけない刑事責任を問われるべきではないのではないか、という問題意識において、共通性があると私は考えています(そういう問題意識もあってこのワークショップに参加した面もあります)。
本日のワークショップでも、上記のような問題点解決のため、ドイツで先行している「日常的・中立的行為による幇助限定理論」が紹介されていて、非常に参考になりました。この理論を、うまく京都地裁の法廷に持ち込み裁判所を効果的に説得することも、無罪へとつながる「黄金の橋」になりうるかもしれません(非常に困難な道ではありますが)。
一介の実務家として、なかなか最新の刑事法理論に触れる機会が得難い私にとって、今回の刑法学会大会への参加は、刺激になるとともに勉強する意欲をかきたてるもので、非常に有益でした。