フィッシング詐欺が刑法上の「詐欺罪」に該当しない理由

我が国の刑法では、①他人を欺いて②錯誤に陥らせ③錯誤に基づいて財物または財産上の利益を移転させることにより、詐欺罪が成立します。フィッシング詐欺の場合、①②は満たしますが、IDやパスワードといったものは、それ自体、通常は、財物でも、財産上の利益でもないため、そういった行為自体は、一般的には、刑法上の詐欺罪には該当しないということになります。
現在、経済産業省が中心となって、「情報窃盗」(これも、現行法では窃盗罪には該当しません)を処罰する方向で検討が進められていますが、フィッシング詐欺のような、一種の「情報詐欺」も、深刻な問題であることは認識しておく必要があります。
私が知る限り、捜査当局は、現状では、現行法の枠内での立件(偽装の点での著作権法違反、偽装の被害にあったISP等に対する偽計業務妨害罪など)を目指しているようです。