那覇地検、冒頭陳述に映写機活用

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050526-00000010-ryu-oki

岡口裁判官のブログ経由で知りました。

この日の法廷では、検察官が冒頭陳述に合わせてパソコンを操作し、犯行当日の足取りをたどった地図や絞殺の方法を示したイラスト、犯行の動機につながる男性被告の借金の推移を示すグラフ、調書の写真などがスクリーンに次々と映し出された。スクリーンは、傍聴席から見て法廷内の左側に位置する検事席側に設置された。

こういった動きに反対するわけではない(むしろ賛成)のですが、例えば、「調書の写真」(おそらく調書添付の写真のことだと思いますが)を、その調書が証拠になっていない冒頭陳述の段階でそのまま示して良いのか?と思いますね。
その他の具体的に紹介されている上記のものの中にも、証拠そのものを引用しているものがある可能性が高いでしょう。

第296条
証拠調のはじめに、検察官は、証拠により証明すべき事実を明らかにしなければならない。但し、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調を請求する意思のない資料に基いて、裁判所に事件について偏見又は予断を生ぜしめる虞のある事項を述べることはできない。

これが、検察官の冒頭陳述に関する刑事訴訟法の規定ですが、明らかにすべきなのは「証拠により証明すべき事実」であって、「証拠そのもの」は、その後の証拠調べで、証拠として採用されてはじめて裁判所の目に触れるべきもの、というのが刑事訴訟法の建前です。
わかりやすさの追及は、反面で、刑事訴訟法の基本構造に反することになる場合もあり得るので、従来の法令の改正も含め、検討すべきだと思いますし、新しい試みも、法令の範囲内で行うべきであるということを忘れてはならないと思います。
あまりにも「生々しすぎる」冒頭陳述では、それ自体が、裁判所(裁判員も含む)に対し、実質的な意味での偏見や予断を生じさせ、証拠を調べる前から、「有罪」という心証を生じさせる危険性を忘れるべきではないでしょう。検察庁が、単に「国民にわかりやすい裁判」だけを目指して、必死になっているわけがなく、「裁判員制度の下でも確実に有罪判決を獲得できる方法」を、組織をあげて模索し、上記のような報道で紹介されている出来事も、そのような「野望」達成の一環として行われていることも指摘されるべきです。