「警察内部告発者」(原田宏二・著)

警察内部告発者・ホイッスルブロワー

京都へ行く途中の新幹線内で、半分くらいを読んだ。著者は、元北海道警方面本部長・警視長という要職にあった人で、道警のいわゆる裏金問題を告発している。
この本の内容の真偽はわからない。ただ、著者が、相当な覚悟をもって、一種の「捨て身」で、一連の告発や、こういった著書の出版に及んでいるということはよくわかる。ここまでの姿勢と覚悟で臨んできている人に対しては、受けて立つ方も相当な覚悟で臨んで行かないと、とても太刀打ちできないだろうと思う。
他に感じたのは、次のような点である。捜査機関に不可欠なのは、国民からの信頼と現場の捜査員の高い士気である。真実を解明し処罰されるべき者が適正に処罰され無辜が処罰されないためには、国民が捜査機関を信頼し、協力の上、有益な情報を提供してくれなければならない。捜査機関に対する不信感が高まれば、そのようなところに協力も情報提供もできるものか、ということになりかねない。そのような捜査機関に明日はない。
現場の第一線で働く捜査員の高い士気に基づく地道な努力の積み重ねも、真実の解明や国民の信頼を獲得する上で不可欠である。捜査員の士気が落ち、熱意が失われて、おざなりな捜査処理しかなされなくなれば、真実の解明は困難になり、国民の不信感が募るだろう。
この本を読んでいて、北海道警に対する道民の信頼が次第に失われ、また、現場の捜査員の士気が徐々に落ちていっているのではないかとの危惧を感じた。単なる杞憂であればそれに越したことはないが、もし、そういった傾向が存在し、それが北海道警だけの問題ではない、ということになれば、非常に由々しき問題であろう。
現在、そして今後の警察を考える上で、非常に参考になる一冊であると思う。なお、文章が非常に読みやすく、わかりやすいことも特筆に値する。