「P2Pコミュニケーションの可能性と法的課題」について(感想)

聞いていて、特に新鮮味を感じ、おもしろいな、と感じたのは、田中助教授のお話でした。調査結果と立論との間に、やや飛躍も感じましたが、こういった視点(著作権の最適保護水準、といったもの)は、法律家はなかなか持てないものなので、興味深く聞いていました。田中助教授には、更に研究を深めていただきたいと感じています。
戸叶氏の発表の中にあった、著作権者の「本音」の話にも、なかなか興味深いものがありました。「権利保護の仕組みを用意しなければ、管理責任が技術に及ぶこともあり得る。」と考えている以上、「管理責任を技術に及ぼす」という動きが、今後とも強まる可能性があるでしょう。京都地検京都府警だけでなく、その他の捜査機関にも、今回のシンポジウムで紹介されたような世界の動きや種々の議論の中で、「刑事責任を技術に及ぼす」ような動きが果たして妥当なことなのか、という問題意識は是非持ってもらいたいものです。忙しくて勉強する時間などはあまりないかもしれませんが、特定の人の特定の考え方に「踊らされる」ようなことがないようにすべきでしょう。権利者の方々、団体も、こういった明確なご意見をお持ちである以上、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20041106#1099727400

のように、招かれても公開の場に出ない、といった対応ではなく、出るべきところにはきちんと出て、建設的な議論をするという姿勢が必要でしょう。京都府警や京都地検のようなところに入り浸っているような動きをしているだけでは、捜査機関の理解は得られても、広く国民(換言すれば「利用者」)の理解を得ることは難しいと強く感じます。
全般的に、今回のシンポジウムでは、権利者の権利を保護しつつP2P技術を発展させて行こうという真面目な議論、検討が行われており、望ましい方向性であると感じました。今後とも、こういった方向で、幅広い議論が建設的に行われることを期待したいと思いました。