「P2Pコミュニケーションの可能性と法的課題」について(その3)

第3部 パネルディスカッション
モデレータ
 大橋正春 岡崎・大橋・前田法律事務所 弁護士
パネリスト
上野達弘 立教大学法学部教授
小川憲久 紀尾井坂法律事務所 弁護士
城山康文 アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士
椙山敬士 虎ノ門南法律事務所 弁護士
鈴木正朝 ニフティ株式会社情報セキュリティ推進室課長
星合隆成 NTTネットワークサービスシステム研究所主幹研究員
宮下佳之 あさひ狛法律事務所 弁護士

(以下、興味を感じた発言要旨をかいつまんで紹介)

第1 P2Pを利用したファイル交換に対する法的規制の現状
・ Winnyについては、民事になじまない訴訟を刑事で起こすのは乱暴ではないか?
ファイルローグ事件についても、サービス提供者についてあの程度の関与で責任を認めてしまってよかったかは、検討の余地がある。
・ 仲介型かどうかでサービス提供者の責任の有無を分けるという考え方には、一応の根拠がある。Winnyについては刑法の議論。これが有罪になると、民事で差し止めの対象にならない(と現状では考えられる)ものについて、刑事で違法視されることになるが、これで良いのかということは問題になる。仲介型かどうかで分ける考え方も再検討すべきということになるかもしれない。
・ 間接侵害に関する基準を明確化すべき、という意見には同感。今後、基準をさらに明確化して行く必要性がある。
・ 条文上、基準を明確化することには限界がある。具体化しすぎることによる弊害もあるだろう。
・ 管理できないものを作っておきながら、いて違法行為に利用されるということについて、管理可能性を論じることはナンセンスではないか。

第2 匿名性の問題をどのように考えるか
・ 管理しきれない技術を作ることの問題性がある。しかし、技術とビジネス手法は分けて考えるべきではないか。一旦放流されると消せない情報は非常に問題。そういったところでの匿名性は制約されるべきではないか。
・ 匿名性を考える場合、権力批判といったことを可能にする手段を確保する、ということは考える必要がある。
・ 放流型であっても、本当に必要なときには削除等ができるという技術である必要があるのではないか?
・ P2Pと匿名性は分けて考えるべき。必然的に一体のものではない。匿名かどうかで判断するというよりも、内容によって判断する必要があるだろう。正当な表現は匿名であっても保護されるべき。
・ 匿名性と法的な規制、責任の関係が問題。健全なネットワーク社会を形成するために、一定の場合に発信者がわかるようにすべきだとは思うが、法的な構成には悩ましいものがある。

コメント:

この点について、私は、以前、このブログで

「匿名性」の今後に関するイメージ(私見
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20041122#1101051685

と述べたことがあります。

第3 P2Pビジネスについて
・ 金額、使い勝手等で、携帯電話を超えられるかどうか?DRMがかかっていても私的複製はできる、という方向で進むことで、ビジネスになるのではないか。
・ わざわざ違法なことをしてまで入手するより、買ったほうが良い、という値付けが重要ではないか。コストのかかるDRMも不要になるかもしれない。
・ 利用者の利用形態に応じて、きめ細かく課金できる、ということも必要ではないか。そのためにはDRMは不可欠であろう。DRMに対する法的保護も必要。Ipodが成功したのは、ユーザーフレンドリーだったからだと言われており、権利者側にリスクはあっても、使いやすくする必要がある。
・ 現行の著作権法では、技術的保護手段を回避して著作物を利用する行為自体を著作権侵害とは見ていない。そこは今後検討されるべき。
・ DRMの乱立は望ましくない。統一が望ましい。
・ 統一について、強制は望ましくない。自然淘汰で生き残るべきものが生き残るのが望ましい。
・ ペイパービューについては、今後、もっと考えて行くべきではないか。
・ DRMの考え方は間違っている。有体物と違って排他性がない情報は、原則利用自由で、必要に応じて利用を制限するというものであるべき。
・ 確かに、一つの考え方ではあるが、今までの考え方を全面的に崩すのは難しいだろう。
・ 著作権の問題にユーザの意見が反映されていないのは問題。
・ スカイプは、P2P技術を利用することにより画期的なシステムを構築しており、見習うべき。
・ DRMがないと、本当にビジネスとして成り立たないのか?
・ ユーザ、特に音楽ファンは、面倒なことが嫌い。P2Pサービスで法的に問題がないサービスを提供するためにはどうすればよいのか教えてほしい。