「P2Pコミュニケーションの可能性と法的課題」について(その1)

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昨日午後、行ってきました。真面目そうな会社員風の人がほとんどの中、赤いL.L.Bean上着を着た私は、場違い(?)な感じでした。
それはともかく、なかなか有益なシンポジウムで、参考になりました。以下、その内容ですが、もらった資料や聞き取った内容に基づいているものの、やや網羅的ではない面があり、あくまで「私」というフィルターを通しているので、その点、ご留意下さい。

第1部 P2Pの可能性と違法有害情報への対応
第1 P2Pの理念とその活用―その本質と効果―
(星合隆成 NTTネットワークサービスシステム研究所主幹研究員)
1 P2Pの本質とは何か。
P2P以前の考え方は、ブローカ中心であり、サービス提供者が用意するコンピューティング資源の有効活用、というものであったが、P2Pの本質はブローカレスであり、ユーザ(サービス利用者)のコンピューティング資源の有効活用である。両者は、ビジネスモデルの視点が異なっている。
 ブローカ型の場合、高性能かつ膨大な数のサーバ、大容量の通信回線が必要になり、膨大な設備投資、多大な投資リスクが必要になる。また自由度が低い。これに対し、ブローカレス型では、設備投資が不要であり、投資リスクが小さく、自由度が高い。
 つまり、P2Pの本質は、ブローカレスのコミュニケーションモデル(新たな通信パラダイム)であり、ピアとピアが直接通信することではない。P2Pは理念であって手段ではない。P2Pの技術には種々のものがある。
2 P2Pの効果とは何か。
① 低コスト
② 高い自由度、柔軟性
③ 高いスケラビリティ(ボトルネックがない)
④ 高い耐故障性
⑤ 自律性・個の尊重
⑥ プライバシー、ポリシー保障
3 様々な分野・業界への適用事例
 P2Pへ注目する人々や業界は多い。地域情報化、自動車業界、広告業界、ゲーム業界、マスコミ業界、グリッド、流通業界、また、業種間の連携・協調。
4 P2Pと著作権問題をどう考えるか。
① P2P=ファイル交換サービスではない。様々なサービスが存在する。
② P2Pと著作権問題は直接関係がない。P2P技術を用いているスカイプは、著作権問題を引き起こしてはいない。
③ P2Pはデジタル技術(複製技術)ではない。
5 提言
① P2Pを味方にして有効活用
② 配信技術に依存しない著作権管理技術の確立
 本来、両者は独立に成立する技術
 P2Pを問題視するのは、P2Pが強力な配信技術であることの裏返し
③ モラル・良心に恥じないサービス・技術の確立

第2 振り込め詐欺メール等有害情報への対策
(鈴木正朝 ニフティ株式会社情報セキュリティ推進室課長)
 オンライン型の犯罪行為には、オンライン振り込め詐欺のように、被害者をおびき寄せるための情報をあらかじめ撒き餌のようにネット上にばらまくことからはじまるものがある。これは、一種の有害情報ということもできる。
 オンライン振り込め詐欺は、ワン切りのような電話による場合やワンクリック詐欺のようなメールによる場合だけでなく、近年はP2Pのようなブローカレス型も登場してきており、通話記録や接続記録などの痕跡すらなくなり、より匿名性が高くなっている。したがって、ブローカ型を前提とする電話会社やISPに対する犯罪捜査にも限界がある。
 ブローカレスモデルの一例として「VoIP SPAM」がある。ワン切りのIP電話版であり、メッセージを留守録に残し、被害者が電話をかけると有料サービスと称して支払を求める。IP電話はP2Pのため、メールのSPAMフィルタのようにセンター側でブロックすることができない。
対策案
1 「行政」経済産業省・警察等と金融庁とが連携しての口座凍結措置の制度化
2 「司法」振り込んだ被害者の迅速な救済
  福島弁護士方式による金融機関からの口座名義人の開示請求
  返還訴訟の提起(不当利得・不法行為
3 「被害者予備軍」リテラシーの向上
4 「民間(事業者団体等)」通報への協力、広報活動への協力
要望案
 「警察」未遂事件の捜査の徹底の要請
(口座情報は、未遂事件を積極的に掘り起こすことでより多く集められる)
課題
1 警察が捜査の過程で取得した口座情報を、迅速に被害者側に開示できる制度を創設できないか?
2 被害者に民事訴訟の負担を課すことなく、振り込んだ被害者に現金を還付する簡便な手続は考えられないか?
3 例えば、被害申告→行政庁による審査→金融庁などによる預金凍結命令→公告→預金者の異議申立→(異議申立期間の徒過)→行政処分に基づく金融機関による預金の強制解約手続→供託的管理→被害者を特定しての還付・不明の場合は国庫