特捜部長の「私信」全文を読んでみて

コメント欄で紹介してもらったおかげで、全文を読むことができました。
しかし、私の感想は、昨日と変わらないですね。
特捜部長が、マスコミを敵視する理由自体は、それなりに理解できなくはありません。私も経験がありますが、強制捜査前のマスコミ報道により、事件関係者が通謀したり重要な証拠を隠匿したり、といった例は少なくないのが実情で、捜査側として、苦々しく思う気持ちはわかります。
しかし、マスコミ側にも報道の自由というものがあり、読者や視聴者にも、事件や捜査の状況について知りたいというニーズもあり、さらに、マスコミ各社の間にはし烈な競争もあるわけですから、事実を、迅速に報道しようということになれば、特捜部長が忌み嫌う「前打ち」ということが起きてくるのは必然です。捜査が成功するために報道を控えてくれ、と依頼するのは自由ですし、マスコミ各社が、そういった依頼に理解を示して一定の自制を行う、ということが、あってはならないとまでは言いませんが、マスコミが、捜査機関の希望に応えてくれなかったからといって、「やくざ者より始末におえない悪辣な存在」とか、「犯罪支援を行っている」とか、「有害無益」といったことを、よりによって東京地検特捜部長ともあろう者が、いくら「私信」の上とはいえ口にすれば、見識を疑われて当然でしょう。
諸外国では、特定の事件について、裁判所の判断により、報道等を制限する、という措置を講じる場合があるようですが、東京地検特捜部は検察庁内にあり、検察庁法務省と一体となった組織ですから、こういう、つまらない「私信」を書いて配っている暇があったら、マスコミ報道が捜査に及ぼしている悪影響を法務省へ報告して、上記のような措置が講じられる立法の検討を行うのが筋でしょう。