「はてな」問題について(総括のようなもの)

はてな」の一連の騒動(?)については、既にこのブログでも取り上げたように、

http://www.hatena.ne.jp/info/address

といった結果になったが、他のブログを見ていても、「総括」している人が特に見当たらないので、「総括のようなもの」ということで、若干、考えてみたい。
まず、「はてな」の当初の発表が、利用者の懸念、疑問、反発等を十分予想しつつそういったものにきちんと応えて行けるという見通しを持たないまま、行われてしまったということは指摘できると思う。確かに、利用者の意見は必ずしも一貫していなかったり、法的な理解が不十分だったり、また、独りよがりな点もあるかもしれないが、やはり、こういったサービスというものは、利用者があってこそ成り立つものであり、利用者の批判をしていても始まらないのであって、できるだけ理解が得られるような利用規約、プライバシーポリシー、あるいは各種の措置である必要があろう。最終的には、どうしても理解が得られない利用者には、もう使ってもらえない、ということになるが、そうなる前に、できるだけ理解が得られるよう、「説明責任」を果たす必要があるし、無用な懸念、疑問、反発等が起きないように、事前に練るべきことは十分練っておかなければならない。そういった面で、「はてな」の対応が十分であったとは言い難く、今後の反省材料にはなると思われる。
次に指摘できるのは、上記の点とも関連するが、住所等の登録が、利用者の印象としては、さしたる根拠もなく利用者に対して一方的に負担を強いるもので、しかも、登録した住所等の管理についての不安がつきまとい、強い反発を招いたことである。大多数の利用者は、楽しくブログを利用しており違法、不当な行為とは無縁である。弁護士もそういう面があるが、問題行動を日常的に多数見ていると、誰も彼もがそういった行動に及んでいるような一種の「錯覚」が生じる。しかし、実際は、そういった行動に走る人は、全体の中ではごく一部にしか過ぎない(重要な問題ではあるが)。そのあたりの感覚が、運営者である「はてな」側と多数の利用者との間で、ずれていた上、ファイルローグ事件などを根拠とする「はてな」の説明を、利用者が理解できず、利用者にとってメリットのない一方的な負担と映った面は強いと思われる。そして、個人情報については、来年4月の個人情報保護法の施行を待つまでもなく、多くの人が敏感になっており、管理面で盤石の態勢とは考えにくい「はてな」が、膨大な個人情報を持ってしまうことに対する「あやうさ」というものも、多くの人が感じたのではないかと思う。

最後に指摘できるのは、「はてな」に、例え反対があっても、今後の運営や利用者の利便性等のために正しいと確信できることであれば万難を排して実行する、という強い決意が今ひとつ感じられなかったことであろう。例えば、著作者人格権について、このブログでも指摘したように、「はてな」は、当初の案よりも「はてな」にとって制約度の高い著作者人格権不行使特約条項を利用規約に盛り込むことで決着をつけたが、小倉先生が、このブログの11月20日のコメント欄で、

著作者人格権不行使特約騒動については、利用者のごり押しで、必要なリスク回避を行えないようにしてしまったという意味で、消費者運動の歴史的な汚点になりかねないと思いますけどね。RSSでユーザーの著作物を「改変」したとしてどこかのBLOG事業者を訴えるユーザーが出てきたときに。

と指摘されているような問題について、他のブログにはない「はてな」のユニークなサービス提供上、本当に上記のような決着で良かったかどうかという疑問は残る。そういったところまで考え抜いた上での決着であれば問題はないが、利用者の声に押され問題を先送りしてしまったのではないか、という印象を、私は払拭することができないでいる。問題を先送りしてしまったのであれば、近い将来、再び同様の議論をすることが避けられないということになろう。
総括にならないので、「総括のようなもの」になってしまうが、私は、一連の流れや「はてな」が出した結論を見て、以上のように考えているところである。