南野法務大臣を見ていて思うこと

かなり荷が重そうですが、私は、ちょっと別の印象を持っています。すなわち、小泉総理は、法務大臣を重視していないんだろうな(重視する必要性を感じるような状況に身を置いていないんだろうな)、ということです。
昭和50年代以降、ごく最近まで、法務大臣は、常に、隠然たる影響力を持つ重要ポストだったと思います。田中角栄元首相が、「闇将軍」として政界に君臨していた時代には、常に、息のかかった法務大臣を送り込み(その典型的な例が秦野法務大臣でしょう)、指揮権発動をちらつかせつつ、陰に陽に検察庁に圧力をかけ、おそらく、取れた情報も、法務大臣から直接、あるいは間接に、田中派に流れていたはずです。そういった目で、田中派の流れを引く旧橋本派東京地検特捜部の、日歯連を巡る動きを見ると、長年の因縁、恩讐を感じさせるものがあります。
田中元首相が病で倒れて影響力を失った後も、東京地検特捜部による政界捜査は、常に政局へ影響を与え続けており、法務大臣の占める地位、言動といったものは、常に一定の注目を集めていたと言えますし、時の首相としても、コントロールできる、それなりに能力のある法務大臣を任命しておくことが、自らの政治生命のために必須だったと言えると思います。
このあたりの経緯は、立花隆氏の

巨悪vs言論―田中ロッキード...文春文庫

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が、非常に参考になります。
ところが、今の法務大臣は、あの状態です。おそらく、小泉首相としては、東京地検特捜部による政界捜査の矛先は、旧橋本派などへ向けられ、「自分は関係ない」し、捜査により抵抗勢力が排除されて好都合、程度に考えているのでしょう。あの状態では、小泉首相の目を盗んで、どこかの誰かと通謀するような芸当も、とてもできるとは思えないので、薬にもならないが毒にもならないので、まあ、いいや、と小泉首相は思っているのかもしれません(とはいえ、今の状態はあまりにもひどすぎますが)。