交渉相手から200万円受領 名古屋の弁護士逮捕

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009111290121436.html

容疑者は愛知県刈谷市の土地建物の取引をめぐり、借地人の男性から借地権譲渡契約について交渉を受任。2007年5月25日ごろ、借地権を男性からこの土地を所有する会社の社長に譲渡する内容で契約が成立した直後、交渉相手だった社長ら2人から、意に沿った契約をまとめた謝礼として200万円を受け取ったとされる。

意外と知られていない可能性がありますが、弁護士法では、

汚職行為の禁止)
第26条 弁護士は、受任している事件に関し相手方から利益を受け、又はこれを要求し、若しくは約束してはならない。
汚職の罪)
第76条 第26条又は第30条の20の規定に違反した者は、3年以下の懲役に処する。

という規定があり、以前、高名な商法学者でもあった弁護士が、同様の事件を起こし有罪判決を宣告されたことがありました(ぎりぎり執行猶予で終わったと記憶しています)。有罪になれば、その行為の悪質性から、実刑も十分あり得る犯罪でしょう。
弁護士というのは、とかく誘惑が多い職業ではありますが、そうであるからこそ、超えてはいけない一線、守るべきルールといったことを日頃から自覚し、自重自戒を旨に生活すべきということを改めて感じます。

裁判員裁判・雑感

現在、横浜地裁で係属中の、ある強盗致傷事件(他に強盗事件もあり併合審理)を私選で受任していて、横浜地裁で行われている打ち合わせに出ています。今月中に、正式な公判前整理手続が行われて、今後、裁判員裁判へと進むことになります。
事件の進行自体は順調で、裁判所にも検察官にも、今のところ特に問題はありませんが、やっていて、こういう裁判で本当に良いのか、と思う面があります。
先日、某全国紙の記者が、裁判員制度について連載記事を掲載する関係で話を聞きたい、ということで事務所に来た際にも言ったのですが、「裁判員制度」という枠の中でおさまるように、証拠をはじめ、あらゆる物事が中途半端な形で詰め込まれてしまう、という不満がどうしても残ってしまう、ということを、やっていて強く感じます。わかりやすく言うと、いろいろな点で性能が良い車が作れるにもかかわらず、車のサイズがこの程度でしかないから、価格もこの程度に抑えたいから、ということで、エンジンも中途半端、各種装備も中途半端な車を無理矢理作らされている、という感じでしょうか。
従来の「精密司法」というものを礼賛するつもりはなく、あれはあれでいろいろな欠点を持ってはいましたが、しかし、裁判員裁判になるような重大事件について、捜査を緻密に行い、捜査機関が収集した証拠が充実したものとして法廷へ出され、それについて、被告人、弁護人が争うべきは争う中で、その事件、被告人に関する事実が解明される、そのためには必要な時間も手間もかけ、裁判所が充実した審理に基づいて慎重に判断する、といった従来のやり方が、それほど間違っていたのだろうか、それを捨てて、今、やっていることが、本当にあるべき裁判で、国民にとって利益になることなのか、ということについて、強い疑問を感じずにはいられません。
従来の裁判が、オーダーメードの1着を買い求めるようなものだとすれば、裁判員にわかる範囲、理解できる範囲で証拠を出して3日、4日でさっさと判断してもらいましょう、という裁判は、その辺で売っているものを適当に買って行きましょう、といったようなもので、人のかけがえのない人生、運命が、そのようなお手軽な決め方をされてしまって良いのか、という疑問を、今の私は払拭することができません。

弁護士も就職難 法曹人口増、依頼減で 

http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0002512260.shtml

ボツネタ経由で知った兵庫のニュースですが、かなり深刻な状況のようですね。

法曹人口をめぐっては、司法試験合格者を10年までに3千人程度に増やす政府計画により、かつて500人前後だった合格者が本年度は2043人に増加。法律事務所に就職できず、経験もないまま「即独立」を強いられる新人弁護士も増えているという。
その影響もあって、弁護士の魅力は「今後上がらない」と87人が回答。さらに「人口増で人権活動や労働問題など無償活動が低下する」と86人が懸念を示した。
兵庫県弁護士会は、司法修習修了者に、法律事務所や企業への紹介など就職を支援しているが、成果は芳しくない。10月中旬、神戸市内の事務所に内定した司法修習生(26)は、司法試験合格直後から約30事務所を駆け回ったといい「同期でまだ内定をもらえない修習生がいる。複数人採用の事務所はほとんどない」。

私は、最近でこそ、「人」経由でいろいろな事案の相談、紹介を受け、中には社会の注目を集めるような事件もあったりしますが、元々、独立(私の場合はヤフー株式会社での勤務が非常勤になった2001年11月ですが)後、しばらくは、事務所もレンタルオフィスの3畳程度のところだったり、仕事もないので国選や当番をかなり沢山やっていたりと、恵まれない時期(今でも恵まれてるとはとても言いかねますが)が結構長かったのが実態でした。そういう経験を踏まえて言うと、従来の法律事務所というものは、お金がある企業、人といったものに依存する度合いが強いあまり、細かい仕事を嫌がり、それ故に、現在のような景気が厳しい状況下でお金がある「はずの」企業や人に依存できなくなると悲鳴を上げてしまう、ということになりがちなような気がします。これから弁護士になろうとする人、なって間がない人も、そういった構造に依存しようとすればするほど、事務所がない、仕事もないといった、負のスパイラルの中に入り込んで抜けられなくなるでしょう。
では、どうすれば良いのか、ということについては、これまで本ブログでも私なりの考えを述べたこともありますが、これだけ多くの人がインターネットを活用し、インターネットで情報を得ている以上、それを使わない手はない、ということは確実に言えると思います。

しらせ、レイテ沖で洋上慰霊祭 太平洋南下中

http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009111401000664.html

小梅三津男艦長が「祖国のため身をていした幾多の英霊に謹んで哀悼の言葉をささげます」と述べ、海に花輪を投げて手向けた。しらせは周辺海域を1周、乗員の海上自衛隊員が弔意を表して小銃の空砲を撃った。
レイテ沖海戦は日本の戦艦武蔵が撃沈された海戦。しらせをはじめ海上自衛隊の艦船はレイテ島沖を通過する際、洋上慰霊祭を営むのが慣例になっている。

レイテ沖海戦は、広く知られているように、日本海軍が最後の力を振り絞って起死回生を賭けたもので、最初の神風特別攻撃隊が出撃したり、小沢艦隊が囮になってアメリカ機動部隊をつり上げている間に、栗田艦隊がレイテ湾に突入を図り勝利を目前に「謎の反転」をして勝機を逃したりと、劇的な場面も多い、史上最大の海戦と言っても過言ではないと思います。
上記の記事を読んでいると、海上自衛隊は、組織としては旧海軍と連続性はないものの、その精神においては旧海軍を色濃く承継しているということを感じます。レイテで散華した幾多の英霊も、海上自衛隊が、日本の、世界の平和を守るために貢献することを、深い海の底から大きく期待していることでしょう。