タクシー運転手殺害、時効まで5日

http://www.stv.ne.jp/news/item/20070516185456/

事件は1992年5月21日の早朝、札幌市手稲区前田6条9丁目の住宅街で起きました。駐車中のタクシー内で福田信勝さん(当時48歳)が死亡しているのが見つかったのです。福田さんは、事件当日の0時半頃、北区新琴似から乗った夫婦を1時頃に、手稲区前田で降ろしました。その後、近くで別の客をのせ事件現場付近をおよそ8キロぐるぐる回ったあと、1時18分、2140円の運賃を精算しようとしたところ事件に巻き込まれたとみられています。福田さんの顔や頭には鈍器で殴られたような跡が十数か所あり、売上金の一部が奪われ、福田さんの財布は、後部座席から死角のところに残されていたため、警察は強盗殺人事件としてタクシーの走行経路を中心に捜査を進めてきました。しかし、「深夜のタクシー」という密室での犯行は捜査を難航させました。

いわゆる「流し」の犯行というタイプの事件で、捜査が難航しがちな部類だと思います。犯人と被害者との人間関係が元々なく、目撃者も期待できず、遺留品等からの捜査もどこかで行き詰まる、という状態になれば、警察としても手詰まりに陥らざるを得ない面があります。
1992年(平成4年)と言えば、私が、まだ新任明け検事として徳島地検にいたころで(まだ28歳でした)、歳月の流れを感じますが、何とか犯人検挙に結び付けられなかったのか、と、残念な気持ちが強く残ります。

「反射的に払いのけた」 長女殺害で被告側

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007051601001012.html

弁護側が、秋田地裁での公判前整理手続きで、橋から突き落としたとされる長女彩香ちゃん=当時(9)=殺害について「反射的に払いのけた」と過失致死を主張していることが16日、分かった。

この事件では、捜査段階の自白調書があるようですが、目撃者がいない、被害者は死亡、被告人は公判で否認、という状況下では、捜査段階の自白の任意性、信用性が徹底的に問われることになります。そこで、有罪、無罪(弁護人は過失致死の限度で認めるようですが)が決まります。
捜査機関側(特に警察)は、取調べの録画、録音により真相が語られなくなる、と強く反対しますが、決定的な自白が得られた場合、録画、録音を行っていることにより、公判での水掛け論を回避し、決定的な自白の任意性、信用性を問題なく認定できる、ということも生じてくるはずです。
とはいえ、そういった制度が採用されていない中での上記公判で、検察官が、自白の任意性、信用性をどこまで説得的に立証できるかが、今後、大きく注目されることになります。

米国:死刑中止に奔走 若き弁護士たち

http://www.janjan.jp/world/0705/0705155520/1.php

薬物注射に対する最近の訴訟では、12の州で死刑執行の中止に成功した。多く場合、薬物注射による死が米国憲法第8条違反である可能性を示す証拠が提示された。第8条は「残酷かつ異常な刑罰」を禁止している。
これらの訴訟の多くは、いわゆる公選弁護人の仕事を専門とする若手弁護士が提起したものである。死刑に値する犯罪の容疑者や死刑囚はほぼ全員が、貧しく弁護士費用を支払う余裕もないため、公選弁護人を必要とする。デンノ氏は、公選弁護人は一般に米国でもっとも弁護士報酬が低いと述べている。

最近、改めて思うのは、日本でも、米国で採用されているような、公設弁護人事務所、といったものを設けて、国選弁護や当番弁護など、公益性のある業務は、そこが中核となって遂行することにしないと、日本の刑事司法は良くならないのではないか、ということです。
質の高い刑事弁護を遂行し、高い専門性を維持している刑事裁判官や検察官と対等にわたりあって行くためには、現状のように、個々の事件単位で報酬をもらう方式では種々の面で無理があります。公設弁護人制度により、その職務に専念する弁護士が全国に存在する状態になれば、専門知識の共有、継承もより可能となり、刑事弁護全体のレベルアップによって、無辜の不処罰、争点の早期明確化による合理的かつ効率的な捜査、公判などが可能となると思います。現行の制度よりは費用がかかることにはなっても、得られる数々のメリットのためにかかる費用としては、十分引き合うものになるでしょう。
法テラスができ、聞こえてくるのは、弁護報酬が以前より更に減らされた、といった話ばかりですが、裁判員制度だけでなく、刑事司法全体の制度設計の見直し、ということを、今後も真剣に考えて行く必要性を痛感します。

福岡高検が「踏み字」捜査へ=全員無罪の鹿児島選事件めぐり

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070517-00000236-jij-soci

同高検の指示で、鹿児島地検は捜査には関与しないという。
福岡高検の高井新二次席検事は「離れた立場から事実を直接見ようと思った。厳正公平に捜査したい」と説明している。

警察官の行為が問題となっていて、通常であれば鹿児島地検が捜査するところですが、公判段階で、地検が「隠ぺい」ともとれる、まずい対応を重ねていたことが明らかとなっている状況で、慎重を期して高検自らが捜査を行うことになったのでしょう。かなり異例のことだと思います。
国民の不信感を払拭できるような厳正な捜査をどこまで行うことができるかに、今後、ますます注目が集まるでしょう。

首都高から日航ビルに金属玉発射、容疑の会社員逮捕

http://www.asahi.com/national/update/0517/TKY200705170356.html

「アクション映画を見て、ガラスがくもの巣状に割れるのにスリルを感じた」と供述しているという。

06年4月11日から今年5月11日にかけて4回、東京都品川区東品川2丁目の日航本社ビルのガラス4枚などを割った疑い。損害額は約1130万円という。

何かと話題の日航を対象とした事件で、社内の内紛絡み、といった背景があるのかと思っていましたが、考えすぎで、一種の愉快犯だったようです。
被害額が1000万円を超えていることに、被疑者も驚いているかもしれませんが、昔、暴力団員がある施設に発砲したという事件(いわゆるカチコミ)の捜査で、ガラス業者の人に事情を聞いたところ、大きな一枚ガラスほど高価で、その値段の高さに驚いたことがあります。
たかがガラスと馬鹿にはできません。

知人女性の氏名や住所掲載=アダルトサイトに、男逮捕−警視庁

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070517-00000138-jij-soci

容疑者は2月上旬、アダルトサイト上に、都内に住む女性会社員(26)を名乗り、氏名や携帯電話番号、メールアドレスなどを掲載した疑い。
その際、わいせつなメッセージや画像なども付けたため、女性には約90通の嫌がらせメールが届き、同署に被害を届け出ていた。 

「他人に成りすますこと」自体を取り締まる刑罰法令はないので、行った行為が何らかの刑罰法令に触れないと、刑事事件として立件することはできません。
本件の場合、具体的な事実関係がよくわかりませんが、一連の行為が「名誉毀損」(具体的な事実摘示による他人の社会的評価の低下)に該当すると判断されたのでしょう。ただ、一般的な名誉毀損とは行為形態が異なっていて、公判請求まで至るかどうかについては、何とも言えないように思います。
警察としても、被害申告には適切に対応する必要があり、動く以上は「刑事」事件としての立件になじむ必要もあり、ということで、この種の事案ではかなり苦労しているものと推察されます。

殉職巡査部長は05年10月からSAT隊員 将来を嘱望

http://www.asahi.com/national/update/0518/NGY200705180001.html

05年4月から機動隊に配属された。同年10月からは特殊部隊(SAT)の隊員となるなど将来を嘱望されていた。同県岩倉市東町で妻(24)と昨年7月に生まれた長女の3人暮らし。今年4月に巡査部長に昇任したばかりだった。

23歳という若さで巡査部長に昇進し、SATに所属していたということで、かなり優秀な警察官であったことは間違いないでしょう。今後、ますます活躍し、愛知県の治安を守る重責を担う人材であったと思います。ご家族もお気の毒と言うしかありません。
警察に対する風当たりは強く、私自身も、内情を多少知っているだけに厳しいことを言ったり書いたりしますが、犯罪、特にこういった凶悪な犯罪に対し、警察官が身を挺して臨んでいる、ということは事実であり、国民としても忘れるべきではないでしょう。
危険な場面に臨むのはやむをえないとしても、できるだけ安全を確保できるような装備、器具や訓練の強化、といったことは、今後、さらに必要でしょう。
現在までの警察の対応に批判が集まっているようですが、この種の立てこもり事件は、今後も発生しますから、不備や過誤などは徹底的に検証して、今後に生かし、出さなくても済む犠牲者等を出さないために役立てるべきで、それこそが、亡くなった警察官も望んでいることではないかと思います。
亡くなった警察官のご冥福をお祈りするともに、早期の事件解決を望みます。

追記1:

<愛知立てこもり>林一歩巡査部長 警察学校を首席で卒業
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070518-00000044-mai-soci

千代和さんは「機動隊となればこういう事件もあり得るが、まさか一歩が……という思い。志願した仕事だったので、ご苦労さまと言ってあげたい」と時折涙をぬぐいながらもしっかりした口調で話していた。

事件・事故は数多く見てきた私ですが、今日は、本当に他人事ではなく悲しく、寂しい思いで一杯です。

追記2:

<愛知立てこもり>深い悲しみに暮れる林一歩警部の実家
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070518-00000116-mai-soci

向かいに住む主婦は林警部について「小学生ぐらいのころから知っているが、いつも礼儀正しくあいさつしてくれる活発な子でした。お母さんから、警察官になるのが小さいころからの夢だったと聞いたことがある。夢がかなったのにこんなことになるなんて」と涙をこらえながら話した。

先日、何かの本を読んでいた際に書いてあった、「我が屍を越えて行け」という言葉を、なぜか思い出しました。人の命は有限でも、思いや志は消えず、受け継がれ育って行く、また、そうでなけれならない、ということを、犯人検挙を報じるテレビニュースを見ながら考えていました。
不備や過誤等は、今後、検証される必要がありますが、警察は、大きな犠牲を払いつつも、粘り強く臨み犯人検挙にこぎつけ、よくやったと思います。