国立のマンション訴訟、住民側の敗訴が確定 最高裁判決

http://www.asahi.com/national/update/0330/TKY200603300370.html

第一小法廷は都市の景観について「歴史的、文化的環境を形作り、豊かな生活を構成する場合には客観的な価値がある」と指摘。憲法の幸福追求権をベースに地域住民には「景観利益」があると認め、各地の景観被害をめぐって住民が裁判で回復を求める道を開いた。
一方で、利益が違法に侵害されたと言うためには、「侵害行為が法令や公序良俗に反したり、権利の乱用に当たるなど、社会的に認められた行為としての相当性を欠く程度のものでなければならない」と、実際の被害救済にはやや高いハードルを設ける内容となった。

景観利益の権利性が認められても、認められる範囲が狭く限定されれば、権利とは名ばかりの「名目権利」でしかなくなります。
また、景観利益といった、曖昧模糊としたものを緩やかに認めれば、地域の開発や発展を大きく阻害しかねず、それはそれで深刻な問題を発生させる恐れもあります。
権利侵害の有無を判断するにあたり、「社会的に認められた行為としての相当性」を基準とすることになれば、何が「社会的に認められた行為」か、が常に問題になりますから、最高裁の判断には、この問題の解決を今後の議論に委ねたという面もあると言えるかもしれません。

<日歯連献金事件>村岡元官房長官に無罪判決 東京地裁

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060330-00000096-mai-soci

判決は、滝川元被告の証言について(1)逮捕前1カ月間に関係者と対応を協議し、金銭出納帳も廃棄しているのに、逮捕まで記憶を喚起する余裕がなかったと説明している(記憶喚起過程の不自然性)(2)1億円献金に関する村岡元長官への報告などで、無視できない供述の変遷がある(重要供述の変遷)(3)幹部会の開始が通常より約20分遅れた点について全く言及していない(供述内容の不自然性)――などを列挙し、信用性を否定した。
さらに、滝川元被告が保釈後、幹部会出席者の上杉光弘自治相の秘書に「誰にも責任がいかないように言った」と告げたことを取り上げ「あえて虚偽の事実を述べている疑いがあると言わざるを得ない」と判断した。
虚偽供述の理由について、判決は、1億円は橋本元首相個人への献金で、領収書不発行が元首相の意向である可能性に言及。「橋本元首相に累が及び、平成研(派閥)が大打撃を受ける事態だけは避けたいと考えるのが自然」と指摘した。
元宿事務局長についても、献金額決定に関与し、自民党政治資金団体国民政治協会を介して事後的に献金を処理する方法を指南した可能性があると言及。「元宿事務局長に捜査の手が及べば、国政協まで問題が波及することは十分予想でき、その不透明な献金処理が暴露されれば、党全体に回復し難い打撃になることは明らか」と述べた。
さらに判決は、元宿事務局長らにより、幹部会前日までに領収書問題が実質的に決着した可能性があるとして「検察側主張の『幹部会ルートによる処理』は虚構との可能性も否定できない」と指摘した。

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20060330#1143701890

でコメントした後、いろいろと見たニュースの中では、上記のものが最も具体的で、まとまっていたので、引用しました。
最重要証人の証言の信用性が、根底から否定されてしまっているだけでなく、そもそもの検察ストーリー自体にも強い疑問が投げかけられており(検察側主張の『幹部会ルートによる処理』は虚構との可能性も否定できない、とまで言われてしまっています)、東京地検特捜部としては、正に屈辱的な、到底承服できない判決と言えるでしょう。
この判決が、今後、上級審で覆らず、このまま無罪で確定することになれば、東京地検特捜部の捜査能力に極めて大きな疑問符がつき、その威信が大きく低下して、今後の政界捜査への影響ということも現実的に出てくる可能性もあると思います。

日歯連献金事件:検察側、立証の柱否定され…村岡氏無罪」
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060331k0000m040181000c.html

中国側、機密執拗に要求…自殺上海領事館員の遺書入手

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060331-00000001-yom-pol

「領事関係に関するウィーン条約」は第40条で、領事官の身体や自由、尊厳に対する侵害防止のため、受け入れ国が「すべての適当な措置」を取るとしている。遺書の内容は具体的で、それを裏付ける中国語文書も存在しているため、中国側の条約違反の疑いが濃厚だ。

確かにその通りだと思いますが、こういった世界は、一種のパワーゲームの世界で、日々、戦争が繰り広げられていると言っても過言ではなく、外交官であれば、つけこまれるような隙を作るべきではありませんし、つけこまれたら、素早く内部で報告して、自殺のような最悪の選択をすることなく事態を収拾すべきでしょう。
亡くなった方を悪く言うつもりはありませんが、中国を非難するだけでなく、再発防止の観点から今後の教訓とすべき点が多い事件であったと思います。

[解説]「割りばし死」医師無罪 不作為の追及困難、第三者機関設置を

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20060330ik03.htm

だが、手術や投薬のミスなど誤った処置で患者を傷つけた場合は罪になっても、今回のように必要な診療をしなかった「不作為」は、それが原因で患者が死傷したことが立証されない限り、罪には問えない。ここに、医療事故の責任を刑事訴訟で追及することの困難さと限界がある。

この記者は、判決が無罪とした理由を完全に読み違えていますね。判決は、医師の過失を完全に認定しており、不作為が原因で患者が死傷したことが立証されない限り罪には問えない、などとは言っていません。医師が作った過失により作った「原因」と、死亡との間の因果関係が認められないから無罪、と言っており、因果関係が認められていれば有罪になったはずです。不作為だから有罪になるための要件が異なってくるかのような誤解が、どこから出るのかわかりませんが、事実誤認も甚だしいと思います。
読売新聞は、所詮、この程度、と言ってしまえばそれまでですが、他人によく投げつけている「社会的責任」という言葉をかみしめてもらいたいものです。

接見拒否で提訴 広島女児殺害

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200603310043.html

訴えなどによると、久保弁護士は昨年十二月十三日、起訴前のトレス被告との接見を地検に申し出た。だが、応対した事務官は担当検事の判断を仰がず、取り調べの都合などを理由に拒否。翌十四日も、担当検事に取り調べとの調整を要請したが、担当検事は「捜査に支障があり、緊急性は認められない」として接見を拒否したという。

これだけでは事実関係がよくわかりませんが、検察官には、接見「指定」権はあっても、接見「拒否」権はないので、接見を申し出た弁護人と、指定権行使にあたり協議し、指定する日時について協議が整わない場合、指定せず放置することは許されず、具体的な日時を指定して指定権を行使する必要があります。
私が任官した平成元年ころは、まだ一般事件でも指定権を行使する事件がありましたが、最近はほとんどなくなっている(特捜事件、公安事件、一部の特殊な事件でしか行使されない)ので、指定権行使に慣れていない検察官が増えている可能性はあると思います。
指定権行使のあり方が、今後の訴訟で問題になることは間違いないでしょう。
実務における指定権行使のあり方については、別ブログ(日々是勉強)のほうで、近日中に触れてみたいと考えています。