郵便誤配巡り「国家賠償」異例の再審決定…大阪高裁

http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20040901it01.htm

違憲判決の効力」として、よく論じられるところです。一般的効力説と、個別的効力説があり、個別的効力説が通説・判例ですが、おそらく、大阪高裁は、個別的効力説に立ちつつ、「民事の再審」の場面で、実質的に一般的効力説的な運用をしたのではないかと思います。このニュースの中の浦部先生のコメントのとおり、最高裁の判断が注目されます。

winny公判(午前中) 速報

9時ころ、京都地裁着。駐車場に、傍聴希望者がどんどん集まってくる。一般向けの傍聴券は60枚とのことだが、傍聴希望者は、軽く200名以上はいるようで、「これは、傍聴できないか」と、半ば諦めの心境に。整理券を受け取った後、間もなく、当選者が発表され、なんと、私の番号49番があった!大学合格や司法試験合格のときと同じような気分を久しぶりに味わいました。
その後、厳重な身体検査を受け、荷物を預けて傍聴席へ。検察官や弁護団が徐々に入廷。以下、時間を追って、午前中の公判経過を紹介します。

10:01 裁判官が入廷、写真撮影(2分)
      被告人が入廷
(やや小太りの感じで、ごく普通の人。顔色は悪くない。色白、外に出ることがないのか?至って落ち着いた感じ)
10:04 人定質問
(職業については、「東京大学大学院特任助手」と答える)

ここで、弁護人による求釈明申し立て(訴因の特定に関して)
1 問題となる行為について、起訴状公訴事実記載の行為に限られるのか、それ以外に何かあるのか?
2 ウイニーそのものを違法なものとして、開発そのものを処罰する趣旨か?
これに対して、検察官は、「公訴事実記載のとおりであり、釈明の必要なし。審理の対象は公訴事実記載の通りで特定されている。」と答える。
弁護人は、「処罰の対象が何かが不明確で防御が困難」と主張したが、裁判長は、「検察官がそのように回答する以上、ここまま進める」と宣言。
さらに、弁護人が、以下の通り意見陳述(公訴棄却の申し立て)
1 公訴事実に、罪となるべき事実が包含されていない。ソフト開発の実態等を理解していない検察官が、社会的に有用な行為を不当に起訴したものであり、社会的損失が大きい。罪刑法定主義にも反している。被告人は、正犯と連絡を取り合ったこともない。ウイニーの開発及び提供以外に、被告人が罪を問われる余地はないが、ウイニーの目的は、価値中立的なものである。このような起訴は、世界でも初めてのケースであり、特異である。刑事訴訟法339条1項2号により公訴棄却されるべきである。
2 訴因が不特定である。ウイニーの開発や公開は違法とはなりえない。開発、公開のいかなる点が違法かが明らかにされるべきだが、何ら明らかにされていない。被告人は、優秀な技術者であり、このような者を処罰するようでは、優秀な技術者の海外流出を招きかねない。刑事訴訟法338条4号により公訴棄却が相当である。
上記の弁護人の意見について、検察官は、「実体審理を待って判断べき」と述べ、弁護人は、冒頭での釈明を再び求めたが、検察官は応じなかった。
裁判長は、「訴因は特定されており、現段階で公訴棄却すべきとも解されない」として、実体審理に入ることを宣言。
10:26 検察官、起訴状朗読
(被告人は、弁護人から提供された起訴状写しを見ながら、起訴状朗読を聞いていた)
弁護人が、起訴状に対する求釈明申し立て
1 ウイニーの開発行為自体を幇助とする趣旨か。ウイニーの改良を問題にしているが、どの部分の「改良」を幇助とするのか。ウイニーの公開や配布を幇助としているのか。
2 ウイニーによる公衆送信権侵害が広くまん延している状況を認識しながら、とされているが、どの程度の認識か。可能性についての認識なのか、確定的な認識なのか。上記のような「状況」とは、いかなるものか。公衆送信権はどの程度侵害されていたのか。
3 被告人が、2のような認識を持った時期を特定すべきである。
4 公訴事実によると、被告人には、正犯の「具体的な」実行行為を容易にする意図はなかったと解してよいのか。
5 問題となっているファイルについて、コピープロテクトの状況は?誰がどのようにしてコピープロテクトを解除し、その点について、被告人の関与はあるのか。
上記の求釈明に対し、検察官は、弁護人の求釈明の内容について確認した上で、
1については、公訴事実記載の通りであり訴因は特定されている
2については、「認識」については確定的なものであり、それ以外の点は釈明の必要がない
3については、立証段階で明らかにする
4については、釈明の必要がないが、被告人が、正犯の氏名、ファイル等を知っていたとするものではない
5については、釈明の必要がない
と答えた。
また弁護団の壇弁護士が、「公衆送信権侵害は、故意に基づくものだけでなく、過失によるものを含む趣旨か」と釈明を求めたが、検察官は、「釈明の必要がない」と返答した。
裁判長は、「訴因は特定されており、公訴事実と検察官の釈明で十分である。」と述べ、それに対して、弁護人が、法令違反を理由に異議を申し立てたが、裁判所は棄却。
10:56
 被告人の陳述(書面に基づく、早口で、声がとぎれがちであり、やや聞き取りにくい)。
 ウイニーを開発、公開していたのは事実。技術的なテストを行う目的であった。幇助の意思はなかった。正犯のことは知らない。ウイニー2はウイニー1にBBS機能を追加したもの。改良の詳細については記憶していないが、著作権侵害を容易にする改良はしていない。技術は有効に活用されるべきものである。この事件は、自分だけの問題ではないと思っている。無罪を主張します。
 続いて、弁護人の陳述。
 事実関係については被告人が陳述したとおり。被告人の行為は幇助にあたらず、無罪である。
 被告人、弁護人の陳述の後、検察官が、「どの部分を認め、どの部分を認めないのか」として、以下の3点につき、求釈明申し立て
1 公訴事実の中の、各正犯への幇助に関する部分に入る前の、(前置きの)「開発、公開していたものであるが」という部分は認めるのか
2 正犯の行為自体について、争うのか
3 認識はともかく、被告人が行った外形的な行為については争うのか
 これに対して、弁護人は、
1については、認めるものである
2,3については、弁護人としては、よくわからないので検察官の立証を待つものである
との趣旨の回答をした。
 その後、検察官の冒頭陳述及び証拠調べ請求。
 検察官は、冒頭陳述の中で、まず、被告人の身上経歴を紹介した後、ウイニーの概要について詳述。一般的に紹介されている内容と同様であるが、匿名性が維持された中で効率よくファイルを送受信でき、ウイニーにより著作権侵害行為がまん延した、と、「まん延」を非常に強調する。
 「著作権を侵害しない態様でのウイニーの使用は困難」と強調。
 被告人の行為については、かねてより現行の著作権法秩序に疑問を持っていたが、ウインMXに関して逮捕者が出たことから、更に強く疑問を持ち、2ちゃんねるの「ウインMXの次は何なんだ」の中で、「作ってみるわ」と開発を宣言し(47番目に発言したことから「47氏」と呼ばれるようになる)、その後、開発の上、改良を重ねつつ、自らのウェブサイトで広く配布、と詳述。
 被告人は、価値中立的なソフトを開発、配布していたものではなく、確信犯的に行為に及んでいた。平成15年11月27日の京都府警による被告人方の捜索まで、238回にわたりバージョンアップを繰り返しており、被告人が使用していたウイニーが、受信専用になっており、通常のウイニーよりも多くのファイルを受信できる仕様になっていて、被告人が自己のPCハードディスク内に違法複製著作物を保存していたことからも、被告人の違法性についての認識が裏付けられている。
 検察官は、被告人の2ちゃんねるにおける発言や、知人に対するメールや発言、被告人が読んでいたインターネット関係の雑誌の記事等から、被告人が、ウイニーによる著作権侵害のまん延状況や自己の行為の違法性を明確に認識していた、と主張し、京都府警の捜査結果によれば、ウイニーでやりとりされているファイルの90パーセント以上が違法複製著作物であり、ACCSが実施したアンケート結果でも、多量の違法複製著作物がやりとりされていることが判明している、とする。
 検察官は、「ウイニーの、著作権を侵害しない態様での利用も不可能ではないが、現実には、著作権を侵害しない使用はほとんどない」と断言し、被告人が、サイト上で、問題が起きても責任は持てない、違法なファイルのやりとりはしないでほしい、と記載していたことについても、何ら実効性がなく、言い逃れに過ぎない、と主張。
 このような検察官の冒頭陳述終了後、弁護人は、「検察官の冒頭陳述を検討した上、釈明すべき点がされているか等を明確にし、その上で弁護人の冒頭陳述を行いたい」として休廷を求め、ここで、午前中の公判終了。

終了時間午前11時41分(午後は1時30分から)

winny公判(午後)速報

13:29 公判再開

まず、弁護人による、検察官冒頭陳述に対する求釈明と、検察官による回答
(弁護人)
 冒頭陳述中の、「摘発を受けることがないようにしてほしいとの要請を受けて」、それに関連する2ちゃんねる内の被告人による書き込み、「ファイルをアップロードしているウイニー利用者の不満を取り入れ」といった各記載について、日時や内容をもっと具体的に明らかにしてほしい。
(検察官)
 次回までに検討
(弁護人)
 ウイニー1とウイニー2は、同一のものか否か
(検察官)
 次回までに検討
(弁護人) 
 冒頭陳述全体について、ウイニーを開発したこと自体を問題視していると読めるが、そういう趣旨か?裁判所に予断を与える余事記載ではないか。
(検察官) 
 公訴事実に密接に関連する背景事情として述べたものである。
(弁護人)
 「匿名」だから違法だ、という趣旨か。
(検察官)
 次回までに検討
(弁護人)
 ウイニーの問題点は、冒頭陳述の中で5つに分けて挙げられている点に限定されるのか。
(検察官)
 次回までに検討
(弁護人)
 検察官の冒頭陳述は、書面に記載したとおりに理解して良いのか?
(検察官)
 次回までに回答
(弁護人)
 冒頭陳述では、「確信犯である」とされているが、公訴事実に記載がある「認識して」と一貫性がないのではないか。実際はどう考えているのか。
(検察官)
 釈明の必要がない。
(弁護人)
 正犯の行為のうち、コピープロテクト解除やエミュレータの利用等について、検察官はどのように考えているのか。
(検察官)
 次回までに回答
 裁判長は、「できるだけ、相互に書面でやりとりして欲しい」と、書面でのやりとりを勧める。
 続いて、弁護人による冒頭陳述。参考図面を法廷の壁面に映写しながら。
 本件は、公訴棄却相当であり、それが認められない場合であっても、被告人に対しては無罪が宣告されるべきである。
 本件起訴は、ウイニーの開発行為そのものを処罰しようとするもので不当である。ウイニーは優れたソフトである。それを被告人は、一人で、ごく短期間のうちに開発した。検察官はP2Pソフトについてあまりにも無理解である。被告人の処罰についての法的根拠が欠けており、だからこそ、検察官は、内容が不明確な幇助を持ち出してきたものである。このような起訴は罪刑法定主義に反する。本件起訴はソフト開発に打撃を与えるものであり、日本の国益に反する。弁護人が、公訴提起そのものを違法とする理由はここにある。
 (被告人の身上、経歴について触れた後)
 ウイニー開発の背景について述べる。P2Pモデルは、サーバクライアントモデルに比べて、サーバへの負荷やダウンを招くことがないなど、優れたものである。総務省のIT政策大綱においても、P2Pは推奨されている。
 このような状況の中で、被告人はウイニーを開発したものであり、著作権侵害をまん延させるといった意図はなく、サイト上にも、違法なファイル交換には使用しないようにと注意書きをつけていた。
 このようなソフトの開発等を幇助犯に問うこと自体がおかしい。それが認められるようなことになれば、コピー機、ビデオデッキ、携帯電話、自動車といった、犯罪にも使用されうるものを開発、提供した者は、ことごとく幇助犯になるが、あまりにもおかしい。
 検察官は、ウイニーの特徴である、情報流通性の高さを問題にしているが、むしろ問題であるのは、コピープロテクトを解除するなどした正犯者の側にある。
 被告人は、違法行為の抑制を呼びかけており、悪用の可能性も、あくまで可能性として認識していたに過ぎず、これをもって幇助の故意と言うことはできない。
 被告人によるウイニー改良行為も、ファイル交換機能強化のためではなく、BBS機能強化等のためである。、ウイニーが適法なソフトである限り、その改良行為も適法である。
 本件起訴によるソフト開発者に対する萎縮的効果には多大なものがある。
 被告人は無罪である。
 以上のような弁護人の冒頭陳述に対して、検察官が「意見にわたるような部分もあるが、すべて証明するのか」と求釈明を申し立てたが、弁護人は、「そのとおりである」と答えた。
 その後、弁護人が同意した書証が、証拠として取り調べられた。
 裁判長から検察官に対し、今後の立証予定が聞かれ、検察官は、公判期日外で証人申請を行う、と述べ、次回以降の期日が定められた。
 次回期日は、9月24日午後。検察官申請による証人尋問の予定。

14:35 公判終了