刑事判例

刑法96条の2にいう「強制執行」と民事執行法1条所定の「担保権の実行としての競売」

最高裁第一小法廷平成21年7月14日決定ですが、判例時報2071号157頁以下に掲載されていました。 刑法96条の2にいう「強制執行」には民事執行法1条所定の「担保権の実行としての競売」も含まれるという判断が示されていますが、その背景には、…

保管又は処分した国産牛肉の量に応じて交付される補助金につき、対象外の牛肉等を上乗せして補助金の交付を受けた場合、補助金等不正受交付罪は、交付を受けた補助金全額ではなく、上乗せした牛肉に係る受交付額について成立するとされた事例

最高裁平成21年9月15日第二小法廷決定で、判例時報2070号60頁以下に掲載されていました。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律29条1項違反の罪(補助金等不正受交付罪)がいかなる範囲で成立するかについての判断が示されています。 …

犯人の一時的な海外渡航と公訴時効停止の効力(最高裁第一小法廷平成21年10月20日決定)

判例時報2068号161頁以下に掲載されていました。 判例時報のコメントでも紹介されていますが、従来の学説では、一時的な海外渡航によっては公訴時効の進行が停止しないとするものが多かったようですが、本決定では、一時的な海外渡航であっても公訴時…

燃焼実験報告書(火災原因の調査・判定に関し特別の学識経験を有する私人が燃焼実験を行ってその考察結果を報告した書面)につき、刑訴法321条3項準用を否定し同条4項の書面に準じて同項により証拠能力が認められた事例

最高裁第二小法廷平成20年8月27日決定(判例時報2020号160頁)で、判例評論第615号(判例時報2069号)206頁以下で、高橋直哉駿河大学教授の評釈が出ていましたが、本ブログでコメントしていなかったので、ちょっと書き留めておくこと…

防衛庁調達実施本部副本部長等の職にあった者が、退職後に私企業の非常勤顧問となり顧問料として金員の供与を受けたことについて、事後収賄罪が成立するとされた事例

最高裁第三小法廷決定(平成21年3月16日)ですが、判例時報2069号153頁以下に掲載されていました。 事後収賄罪というのは、刑法197条の3・3項で 公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為を…

大阪・平野区の母子殺害事件:死刑破棄 最高裁判決要旨

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100428ddm041040145000c.html <多数意見> 有罪認定にあたっては、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要だ。直接証拠がない場合は、状況証拠で認められる間接事実中に、被告が犯人でないとしたら合理…

明石砂浜陥没死事件上告審決定(人口の砂浜の管理等の業務に従事していた者につき砂浜での埋没事故発生の予見可能性が認められた事例)

最高裁第二小法廷平成21年12月7日決定ですが、判例時報2067号159頁以下に掲載されていました。 砂浜での陥没、死亡事故につき、1審判決が予見可能性を否定し無罪としたのに対し、2審は予見可能性を肯定し原判決を破棄して差し戻し、それに対す…

再審請求人により選任された弁護人が再審請求がされた事件の保管記録の閲覧を請求した場合、保管検察官は刑事確定訴訟記録法4条2項5号に当たるとしてその閲覧を不許可にできるか

最高裁第二小法廷平成21年9月29日決定ですが、判例時報2065号161頁以下に掲載されていました。 上記の問題点について、最高裁は、上記のような弁護人は、同法4条2項ただし書の「閲覧につき正当な理由があると認められる者」に該当するから、5…

福島県青少年健全育成条例16条1項にいう「自動販売機」に該当するとされた事例

最高裁第二小法廷平成21年3月9日判決ですが、判例時報2064号157ページ以下に掲載されていました。私自身が弁護人を務めていた事件です。 東京にある販売センターで、24時間365日、販売員がモニター画面等により無人の販売所に来た客の動静を…

募金詐欺、個々の被害特定は不要 最高裁が初判断

http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010031901000779.html 偽の街頭募金活動で、個々の被害者や被害額が特定できなくても詐欺罪が成立するかどうかが争われた刑事裁判の上告審決定で、最高裁第2小法廷は19日までに「募金に応じた多数の人を『被害者』とし…

<名誉棄損>ネット上「深刻な被害ある」最高裁初判断

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100316-00000131-mai-soci インターネット上の表現を巡り名誉棄損罪の成立要件が争われた刑事裁判で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は15日付の決定で「閲覧者がネット上の情報を信頼性が低いと受け取るとは限らな…

児童ポルノを、不特定多数又は多数の者に提供するとともに、不特定又は多数の者に提供する目的で所持した場合の罪数等

最高裁判所第二小法廷平成21年7月7日決定ですが、判例時報2062号160ページ以下に掲載されていました。 「児童ポルノを、不特定多数又は多数の者に提供するとともに、不特定又は多数の者に提供する目的で所持した場合の罪数」については併合罪とさ…

殺人未遂等被告事件において、被告人と犯行とを結びつける唯一の証拠である共犯者の証言の証拠価値に疑問があるとして、控訴審判決が破棄され、控訴審裁判所に事件が差し戻された事例(最高裁第二小法廷平成21年9月25日判決)

判例時報2061号153頁以下に掲載されていたので、ちょっと読んでみました。古田裁判官(検察官出身)が反対し、他の3名の裁判官の多数意見により原判決が破棄差し戻しになっていて、多数意見の1名が反対にまわれば、2対2になっていたところでした。…

被告の責任能力は「総合判断」 鑑定一部採用で最高裁

http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009121001000876.html 最高裁第1小法廷は10日までに「精神鑑定意見の一部を採用した場合でも、責任能力の有無や程度については、裁判所が鑑定書中のほかの意見に拘束されず、総合的に判定できる」との初判断を示した。…

模索続く終末期医療の現場 刑事責任…消えぬ不安

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091210-00000038-san-soci 川崎協同病院の事件後も、平成18年に富山県の射水市民病院で末期患者7人が人工呼吸器を外され死亡していたことが明るみに出るなど、延命治療の中止をめぐる問題は相次いでいる。 治療中止…

拓銀元頭取らの実刑確定へ 最高裁、上告を棄却

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20091111AT1G1101Q11112009.html 同小法廷は決定理由で、企業が実質倒産状態でも、例外的に再建や整理などのために融資が許される場合があるとしつつ、「客観性のある再建・整理計画や銀行本体の強い経営体質など、融資…

旧日債銀元会長らの有罪を見直しへ 上告審弁論

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091109-00000577-san-soci おもな争点は、この期の決算から導入された旧大蔵省の決算経理基準(資産査定通達)が当時、唯一の公正な会計慣行だったかどうか。1審東京地裁は、通達を唯一の会計基準と判断して、粉飾決算…

政党ビラ投函訴訟で判決期日を再指定 最高裁

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/091106/trl0911062033011-n1.htm 最高裁はいったん判決期日を指定していたが、同じ日に弁護側が新たな主張を提出。弁護側の申し立てを受けて、判決期日を取り消していた。 同小法廷は2審の結論を見直すために必要な…

拳銃共同所持:元組幹部の無罪判決破棄、最高裁が差し戻し

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20091020k0000m040069000c.html 被告は97年9月に宿泊中の大阪市北区のホテル前で、拳銃と実弾を所持した配下の組員2人=ともに有罪確定=に警護させたとして起訴された。大阪地裁は「組員の拳銃所持を認識していた…

ペルー人被告、二審へ差し戻し=供述調書不採用は「適法」−広島女児殺害・最高裁

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2009101600616 二審広島高裁は、一審が調書を取り調べなかった点について、「争点が不明確なまま公判前整理手続きを終え、審理を尽くさず違法」と判断。上告審では整理手続きのあり方が争点になっていた。 同小法廷は、公…

令状なくエックス線検査は違法 大阪、薬物事件の宅配便

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/125351ボ2ネタ経由で知りましたが、興味深い判例ですね。 一、二審判決によると、被告は2004年、覚せい剤などの薬物計約3・7キロを暴力団から宅配便で譲り受けるなどした。 被告が実質経営する会社に覚せい剤…

銀行がした融資に係る頭取らの特別背任行為につき、当該融資の申し込みをしたにとどまらず、その実現に積極的に加担した融資先会社の実質的経営者に、特別背任罪の共同正犯の成立が認められた事例(最高裁第一小法廷決定・平成20年5月19日)

判例時報2047号159ページ以下に掲載されていました。 こういった立場の者に、(特別)背任罪が成立するかどうかは、悩ましく問題になることがあり、私も、検察庁にいた当時、背任事案を扱った際にこの問題をかなり慎重に検討したことがありました。 …

他人所有の建物を同人のために預かり保管していた者が、金銭的利益を得ようとして、同建物の電磁的記録である登記記録に不実の抵当権設定仮登記を了したことにつき、電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪とともに、横領罪が成立するとされた事例(最決平成21年3月26日)

判例時報2041号144ページ以下に掲載されていました。 弁護人は、上告趣意書で種々主張する中で、「不実」記録、供用といった行為が横領にあたるというのは自己矛盾である、という主張をしたようですが、最高裁(第二小法廷)は、「不法領得の意思を実…

催涙スプレー携帯で逆転無罪 最高裁

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090328#1238210913でコメントした事件ですが、判例時報2042号143頁以下に掲載されていました(最判平成21年3月26日)。判例時報のコメントは、他の法令における「正当な理由」の解釈状況や、本判決から読み取れ…

塀の上は建物にあたる? 最高裁、「建造物の一部」と初判断

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090715/trl0907152056016-n1.htm 小法廷は「塀は建物と敷地を、外と明確に分ける作用を果たしており、建造物の一部」と判断。「塀の上に上がった行為に建造物侵入罪を認めた2審の判断は正当」と結論づけた。 1、2…

公判1回の「即決裁判」、最高裁が合憲判断

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090714-00000835-yom-soci 同手続きでは事実誤認を理由とした控訴が認められないことについて、被告は「憲法が保障する『裁判を受ける権利』を侵害している」と主張したが、藤田宙靖裁判長は「上訴の制限を定めても、合…

刑法(平成19年法律第54号による改正前のもの)208条の2第2項後段にいう赤色信号を「殊更に無視し」の意義(最高裁第一小法廷平成20年10月16日決定)

判例時報2039号144ページ以下に掲載されていましたが、これについては、以前、本ブログで、http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20081019#1224345441とコメントしたことがあります。 また、その後、この種の事故が問題になったケースで、危険運転致死罪適用…

警察官が私費で購入したノートに記載し、一時期自宅に持ち帰っていた取調べメモについて、証拠開示を命じた判断が是認された事例(最高裁第一小法廷平成20年9月30日決定)

判例時報2036号143ページ以下に掲載されていました。 この判例も、先に本ブログでもコメントした取り調べ時の警官備忘録「裁判証拠」 最高裁も開示命令 http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20071227#1198714917 犯罪捜査に当たった警察官作成の書面が証拠…

急迫不正の侵害に対する反撃として複数の暴行を加えた場合において、単独で評価すれば防衛手段としての相当性が認められる当初の暴行のみから傷害が生じたとしても、一個の過剰防衛としての傷害罪が成立するとされた事例(最高裁第一小法廷平成21年2月24日決定)

判例時報2035号160ページ以下に掲載されていました。 暴行が複数、連続して加えられた場合に、別個の暴行と見るか、一体の暴行として見るかは、通常は、行為態様や行為者の主観面等の「事実面」を総合的に見て判断すべきものですが、本件のように、当…

立川テント村反戦ビラ入れ事件最高裁判決(平成20年4月11日第二小法廷・上告棄却)

判例時報2033号142ページ以下に掲載されていました。 この判決については、以前、http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20080413#1208051051で若干の感想を述べましたが、改めて判決文を読んでみると、管理者(本件では判決文で認定されている陸上自衛隊、航…