刑事判例

保釈された者につき、刑訴法96条3項所定の事由が認められる場合、刑事施設に収容され刑の執行が開始された後に保釈保証金を没取することができるか(積極、最高裁第一小法廷平成21年12月9日決定、判例時報2094号146頁)

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091211104044.pdf 刑訴法96条3項は,保釈された者について,禁錮以上の実刑判決が確定した後,逃亡等の所定の事由が生じた場合には,検察官の請求により,保証金の全部又は一部を没取しなければならない旨規定して…

遊客において周旋行為の介在を認識していなかったことと売春防止法6条1項の周旋罪の成否(最高裁第一小法廷平成23年8月24日決定・判例時報2128号144頁)

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110826093107.pdf 原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,被告人は,いわゆる出会い系サイトを利用して遊客を募る形態の派遣売春デートクラブを経営し,男性従業員と共謀の上,女性従業員を遊客…

1鑑定入院命令が発せられた後に鑑定入院の必要がなくなったことなどの事情と「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」72条1項の鑑定入院命令取消し請求の理由2裁判所が職権で鑑定入院命令を取り消すことの可否(最高裁第三小法廷平成21年8月7日決定・判例時報2097号161頁)

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090811092337.pdf 鑑定入院命令が発せられた後に鑑定入院の必要がなくなったことなどの事情は,法72条1項の鑑定入院命令取消し請求の理由には当たらないものの,裁判所は,鑑定人の意見を聴くなどして鑑定入院命令…

妄想型統合失調症による幻覚妄想状態の中で幻聴、妄想等に基づいて行った行為が「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」2条2項の対象行為に該当するかどうかの判断方法(最高裁第三小法廷平成20年6月18日決定・判例時報2097号158頁)

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080620142458.pdf 対象者の行為が対象行為に該当するかどうかの判断は,対象者が妄想型統合失調症による幻覚妄想状態の中で幻聴,妄想等に基づいて行為を行った本件のような場合,対象者が幻聴,妄想等により認識した…

第1審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の言渡しをした場合と控訴審における勾留(最高裁第二小法廷平成23年10月5日決定・判例時報2135号143頁)

1審で無罪になった被告人について、検察官控訴が申し立てられ、高裁が職権を発動して勾留したことにつき、異議申立が棄却され、特別抗告が申し立てられたものを最高裁が棄却した、というものです。http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111007094042.pdf最…

元少年の死刑確定へ 光市母子殺害事件

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012022090153652.html?ref=rank 最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は20日、被告の上告を棄却した。死刑が確定する。 判決は「犯行は甚だ悪質で、動機や経緯に酌量の余地はない。被害者の尊厳を踏みにじる冷酷、残…

最高裁、裁判員の「無罪」支持 高裁「有罪」を破棄

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012021490070715.html 同小法廷は一審について「裁判員制度の導入で、法廷での直接のやりとりを重視する審理が徹底された」と指摘。一審が事件を直接調べた後の二審は、一審と同じ立場で事件そのものを審理するのでは…

ウィニー開発者、無罪確定へ 最高裁「著作権侵害、容認せず」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111221-00000104-san-soci 同小法廷は「ウィニーの利用方法は個々の判断に委ねられている」と指摘。その上で、幇助罪の成立は「多数の者がソフトを著作権侵害に利用する可能性が高いと認識して公開、提供し、実際に侵害…

福岡の3児死亡事故 危険運転致死傷罪を認定 最高裁、懲役20年確定へ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111103-00000109-san-soci 同小法廷は、同罪の成否の判断は(1)事故の態様(2)事故前の飲酒量(3)酩酊(めいてい)状況(4)事故前の運転状況(5)事故後の言動(6)飲酒検知結果−などを総合的に考慮すべきだ…

証券取引法(平成18年改正前のもの)167条2項にいう「公開買付け等を行うことについての決定」の意義

いわゆる村上ファンド事件に関する、最高裁第一小法廷平成23年6月6日決定ですが、判例時報2121号34頁以下に掲載されていました。 上記の「決定」については、1審判決で、村上ファンド事件1審判決・残る法律上の問題点(日経産業新聞の記事に関連して) http…

強姦罪の被告に最高裁が逆転無罪 「犯罪の証明不十分」

http://www.asahi.com/national/update/0725/TKY201107250692.html 男性と犯行を結びつける証拠が被害者の供述しかない事件だったが、第二小法廷は「被害者の供述が信用できるかの判断は、特に慎重に行う必要がある」との考え方を示した。別の小法廷が09年…

事後強盗としての暴行について共謀等を認めなかった原判決を重大な事実誤認の疑いが顕著であるとして破棄して差し戻した事例

最高裁第一小法廷平成21年10月8日判決です(判例時報2098号160頁)。http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100810151110.pdfにあるように、事実関係については、窃盗行為後、逃走中に、被告人が、追跡してきたBに取り押さえられた状態になり、 被告人は,A…

財産的権利等を防衛するためにした暴行が刑法36条1項にいう「やむを得ずした行為」に当たるとされた事例(最高裁第一小法廷平成21年7月16日判決・破棄自判)

ちょっと前になりますが、判例時報2097号154頁以下に掲載されていました。 事実関係はやや複雑ですが、ざっくり言うと、不動産に関する民事紛争の過程で、権原がないのに立入禁止等と記載した看板を建物に設置しようとした者に対し、正当な権原者である被告…

被告人が原略式命令確定後に、(a)本邦を出国し非常上告申立時において再入国していない場合(b)死亡している場合における非常上告の可否

ちょっと前になりますが、判例時報2092号161頁以下に掲載されていました。abとも、最高裁第一小法廷平成22年7月22日決定です。 非常上告は、判決確定後、法令違反が判明した場合に、法令の解釈適用を統一、是正するために設けられている非常救済手続ですが(…

労働基準法32条1項(週単位の時間外労働の規制)違反の罪と同条2項(1日単位の時間外労働の規制)違反の罪との罪数関係(最高裁第三小法廷平成22年12月20日決定)

判例時報2104号145頁以下に掲載されていました。特別刑法、労働刑法の分野ですね。 労働基準法では、労働時間について、 第32条 1 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。 2 使用者は、1週間の各日につい…

他の者を搭乗させる意図を秘し、航空会社の搭乗業務を担当する係員に外国行きの自己に対する搭乗券の交付を請求してその交付を受けた行為が、詐欺罪に該当するとされた事例(最高裁第一小法廷平成22年7月29日決定)

判例時報2101号160頁以下に掲載されていました。 最高裁のサイトでは http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101206114204.pdf と掲載されています。 決定では、 本件において,航空券及び搭乗券にはいずれも乗客の氏名が記載されているところ,本件係員らは…

北海道開発庁長官が、下部組織である北海道開発局の港湾部長に対し、競争入札が予定される港湾工事の受注に関し特定業者の便宜を図るように働き掛ける行為について、賄賂罪における職務関連性が認められた事例

最高裁第一小法廷平成22年9月7日決定で、著名な鈴木宗男氏に対するものですが、判例時報2095号155頁以下に掲載されていました。事実認定の在り方が妥当かどうかは、決定からはわかりません。 賄賂罪が成立するためには、「職務に関して」賄賂が収…

強盗殺人1件、強盗致死・強盗致傷1件等の事案につき、無期懲役の量刑が維持された事例

最高裁第一小法廷平成21年12月17日決定ですが、判例時報2100号159頁以下に掲載されていました。1審、2審が、検察官の死刑求刑に対し無期懲役とし、検察官が、敢えて上告まで申し立てていたものです。死刑か無期かの限界事例として、今後の参…

前訴の建造物侵入、窃盗の訴因と後訴の非現住建造物等放火の訴因との間には公訴事実の単一性がなく、前訴の確定判決の一事不再理効は後訴に及ばないとされた事例

最高裁第二小法廷平成22年2月17日決定ですが、判例時報2096号152頁以下に掲載されていました。 事件が、やや複雑な経過をたどっていますが、前訴(Aとします)と後訴(Bとします)が相次いで起訴され、当初は弁論が併合されていたのが弁護人の請…

単独犯の訴因で起訴された被告人に共謀共同正犯者が存在するとしても、訴因通りに犯罪事実を認定することが許されるか(積極)

最高裁第三小法廷平成21年7月21日決定ですが、判例時報2096号149頁以下に掲載されていました。 決定では、 検察官において共謀共同正犯者の存在に言及することなく、被告人が当該犯罪を行ったとの訴因で公訴を提起した場合において、被告人一人…

警察署の塀の上部に上がった行為について建造物侵入罪の成立が認められた事例

最高裁第一小法廷平成21年7月13日決定で、本ブログでも、以前、塀の上は建物にあたる? 最高裁、「建造物の一部」と初判断 http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090716#1247672342とコメントしたことがありますが、判例時報2095号154頁以下に掲載さ…

弁護士資格等がない者らが、ビルの所有者から委託を受けて、そのビルの賃借人らと交渉して賃貸借契約を合意解除した上で各室を明け渡させるなどの業務を行った行為について、弁護士法72条違反の罪が成立するとされた事例

最高裁第一小法廷平成22年7月20日決定ですが、判例時報2093号161頁以下に掲載されていました。 弁護士法72条における「その他一般の法律事件」については、判例時報のコメントでも紹介されているように、「事件性」を要するかどうかに争いがあ…

家系図作成、観賞用は適法 最高裁、無資格者に無罪

http://www.47news.jp/CN/201012/CN2010122001000437.html 家系図作成は行政書士の間でビジネスとして浸透。無資格でも場合によっては違法にならないことが無罪判決で明確になり、業界に影響を与えそうだ。 最高裁のサイトで判決がアップされていたので読ん…

保釈請求に関する準抗告決定(原裁判取消、保釈許可)に対する検察官からの特別抗告が棄却された事例

最高裁第二小法廷平成22年7月2日決定で、判例時報2091号114頁以下に掲載されていました。最高裁は、検察官の特別抗告を棄却したものの、 なお、所論にかんがみ職権により調査すると、裁量により保釈を許可した原決定には、本件勾留に係る公訴事実…

ニアミス事故裁判:管制官2人有罪確定へ 最高裁

http://mainichi.jp/select/today/news/20101029k0000m040013000c.html 決定は5人の裁判官のうち4人の多数意見。桜井龍子裁判官は「管制官の指示と事故に因果関係は認められない」として、2人を無罪とする反対意見を述べた。 小法廷は「907便の機長が…

高等裁判所の判決中の判断がその上告審である最高裁判所の決定において否定された場合における高等裁判所判決の刑訴法405条3号の「判例」該当性

最高裁第三小法廷平成22年3月16日決定で、判例時報2079号161頁に掲載されていました。 判例時報のコメントによると、この問題の基準時について、原判決時説 上告審裁判時説が対立しているとのことですが、過去の最高裁判例で、控訴審判決時に既…

明石市花火大会歩道橋事故・上告審決定(最高裁第一小法廷平成22年5月31日)

雑踏警備に関し現場で警察官を指揮する立場にあった警察署地域官及び現場で警備員を統括する立場にあった警備会社支社長に、業務上過失致死傷罪が成立するという最高裁の判断が示されたものです。判例時報2083頁159頁以下に掲載されていました。 一通…

児童福祉法34条1項6号違反の児童に淫行をさせる罪と児童買春・児童ポルノ等処罰法7条3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例

最高裁第一小法廷平成21年10月21日決定(刑集63巻8号1070頁)ですが、判例時報2082号160頁以下に掲載されていました。 既に改正されましたが、問題になった児童淫行罪は、かつて家裁の専属管轄で、児童ポルノ法違反のほうが観念的競合の…

共犯者が住居に侵入した後、強盗に着手する前に現場から離脱した場合において共謀関係の解消が否定された事例

最高裁第三小法廷平成21年6月30日決定ですが、判例時報2072号152頁以下に掲載されていました。 判例時報のコメントでも紹介されているように、こういった「離脱」が認められるかどうかについては、実行の着手前であれば、因果性を解消すること(…

パチスロ店内で、パチスロ機から不正な方法によりメダルを窃取した者の共同正犯である者が、犯行を隠ぺいする目的でその隣のパチスロ機において自ら通常の方法により遊戯した場合、①通常の遊戯方法により所得したメダルについての窃盗罪の成否、②窃取した財物と窃取したとはいえない財物とが混在している場合における窃盗罪の成立範囲

最高裁第一小法廷平成21年6月29日決定で、判例時報2071号159頁以下に掲載されていました。上記①については消極(窃盗罪不成立)、②については窃取したものについてのみ窃盗罪が成立するという判断が示されています。 判例時報のコメントでも指摘…